最近は本当に便利な世の中になった。
スマホを持っていれば、玄関の鍵の開け閉めや家電を動かしたりすることができる。
そういう家をスマートホームっていうらしい。
あと、なんといっても便利なだけじゃなく、セキュリティが高い家も多くなってきた。
なんだか、最近は事件のニュースが連日流れてきて、治安も悪化しているような気もする。
何よりも安全なのが一番だろう。
とはいえ、そういう家もお金がないと住めない。
なので、貧乏人の私は安アパートで、戸締りをしっかりするくらいしかできないのだけど。
ただ、やっぱりこういう家には憧れる。
いつかは住みたいと思う。
そんなことを私が思うのには、もちろん、きっかけがある。
それは同じゼミで、仲良くなった子が、なんというか物凄いお金持ちだった。
家に遊びに行ったら、それはもう圧倒された。
家はデカいし、家の中も綺麗で便利なものばかりだ。
家に入って、スイッチも押してないのに、自動で電気がついたのには感動した。
トイレだって、近づけば自動的に便座の蓋が開く。
なんていうかそれはもう、未来の家って感じだった。
そんな家に圧倒されていた私に、その子は不満を漏らした。
スマホを忘れると、不便だと。
前に、家にスマホを忘れたせいで、家のドアが開かず、3時間も家に入れなかったらしい。
私としてはそういうときのために鍵を持ち歩けばと思うが、普段使わないのに持ち歩くなんて面倒くさいのだとか。
まあ、わからないでもない。
そこで私は色々と調べて、いいものを見つけた。
それは顔認証というものだ。
つまり、スマホがなくても、顔を認証システムに読み取らせれば、ドアが開く。
それを紹介するとその子は便利そうだとはしゃいで、さっそく親に付けてもらうと言った。
だが、1週間後。
その子は不満そうにしていた。
どうしたのかと尋ねると、顔認証を買ったのだけれど、うまく認証されないのだという。
それはその子だけじゃなく、家族のだれがやっても何度やっても認証されないらしい。
そこで、その子は私に来て欲しいと言ったので、私はその子の家に遊びに行った。
そこで、テストとして、私の顔を登録してみると、普通に顔認証され、ドアが開いた。
何回やってもちゃんと開く。
どうやら、機械の故障ではないようだった。
とはいえ、その子の家族は認証されないので、使えないことには変わりない。
なので、今ではドアを開けるのはスマホを使っているようだ。
それでも、十分便利だと思うのだが。
私は、その子の家に影響されて、顔認証とはまではいかなくても、家に新しいインターフォンを設置した。
訪ねてきた人の顔が映るやつだ。
もちろん、会話もできるから、変な勧誘とかはインターフォン越しに断ることができる。
ああいう人たちは一度、ドアを開けるとねばられるから厄介なのだ。
それにセキュリティの面でいっても、十分価値があると思う。
そんなある休日。
家でゴロゴロしていたら、あの子から、遊びに行っていいかとメールが来た。
私の家の方に来るなんて珍しい。
いつもは私の方が遊びに行くのに。
でも、断る理由もないので、いいよと返事をした。
それから40分後。
インターフォンが鳴る。
十中八九、あの子だと思うが、私はとりあえずインターフォンに出る。
「私だけど」
その声はやっぱり、あの子だった。
だけど、私は絶句した。
インターフォンに映っている、あの子の顔を見て、私は絶句した。
目がない。
鼻もない。
口もない。
そこには、ただ肌だけがあった。
私は画面を見つめたまま、動けなくなった。
そして、なぜだかぼんやりと思った。
――だから、顔認証されなかったんだ。
