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なんか最近、物忘れが激しいので、メモ代わりとしてここに書いておこうと思う。
俺は今年、大学生になって、念願の一人暮らしを始めることになった。
ただ、親からは学費と少しの生活費を出すのが精いっぱいで、家賃分は仕送りできないと言われた。
だからバイトをして、家賃分を稼がないとならないというのは、大学に行く前から覚悟はしていた。
けど、そうはいっても、大学生になったら、いろいろと遊びたいというのも本音だ。
そうなれば、家賃は少しでも安いところがいいと思うのは、自然な流れだった。
そこで、親戚のおじさんが不動産関係の仕事をしていると聞いたから、相談してみた。
古くても、駅から遠くても、周りにコンビニとかなくてもいいから、とにかく安いところがいいと注文を付けた。
そしたら、おじさんは「いいところがある」と言って、一軒のアパートを紹介してくれた。
そのアパートは、結構、古い。
築15年以上は経っている。
だけど、そこそこの広さで、近くにコンビニもあって、駅からも近い。
それなのに、2万という破格の値段だった。
俺は速攻で、その部屋に決めた。
そして、大学生活も順調で、それなりに友達も作れた。
そして、夏休みに入る1週間ほど前のことだ。
俺の家に集まって、友達とテスト勉強をしていた。
勉強とはいっても、ほとんどしゃべってばかりだったけど。
そんな中、ふと、この部屋の家賃の話になった。
友達の一人が、この部屋の条件で2万なんて、絶対におかしいと言い出した。
だから、これは絶対にアレだと言う。
そう。
事故物件だ。
正直、俺も最初は、それを疑った。
でも、おじさんが、そんな場所を紹介するとは思えなかった。
仮にそうだったとしても、隠さないだろうと思う。
親戚を騙すような人じゃないはずだ。
そしたら、違う友達が、調べてみようと言い出した。
どうやってって思ったら、今は事故物件が網羅されているサイトがあるようだ。
結構有名らしくて、知らない俺が馬鹿にされたくらいだった。
で、調べてみた。
そしたら、友達の予想は半分当たっていて、半分間違っていた。
というのも、確かに、このアパートは事故物件がある建物だった。
だけど、それはこの部屋じゃなかった。
隣の部屋の403号室だ。
ただ、それを見て、友達はなんか納得したみたいだった。
いくら事故があった部屋じゃなくても、その両隣も敬遠されるものらしい。
だから、値段を下げることもあるらしいのだ。
確かに、俺も隣で人が死んでるというのは嫌だけど、この部屋じゃないなら我慢はできる。
実際、今まで何も起きなかったし。
そんなこんなで、そのときは、勉強会がただの怪談話の会に代わってしまい、朝まで友達とワイワイと騒ぎながら怖い話をして過ごした。
そして、夏休みに入り、いつもよりバイトの時間を長くしていて、帰りは夜遅い時間になっていた。
アパートの通路を歩いているときだった。
ふと、事故物件のことを思い出した。
俺の隣の403号室で人が死んでいる。
あのとき、隣の部屋で誰がどうやって死んだのか、友達とサイトで詳しく調べたはずだった。
なのに、どうしても思い出せない。
それどころか、あの一緒にサイトを見ていた友達の顔まで、なんだかぼんやりしてきている気がした。
でも、そんなことよりも、今は、そこに人が入っているかのほうが気になった。
で、403号室を見ようと思ったら、なかった。
そう。403号室がないのだ。
402号室の次が、俺の部屋の404号室になっている。
なんだこれ、と思った。
もしかしたら、本当は俺の部屋が403号室で、プレートを404号室にすることで、事故物件じゃないというふうに誤魔化したのだろうか。
そんなことができるのか、というか許されるんだろうか。
さすがにこれはおじさんと不動産会社に文句を言おうと思った。
だけど、ふと、あることを思い出す。
このアパートには、1階に、すべての部屋の郵便受けがついている。
つまり、それぞれの部屋に郵便物が送られるのではなく、1階の郵便受けにそれぞれの郵便物が入れられる。
その中で、各階、5つ分の郵便受けがあるのを思い出した。
念のため、一階に降りてみて、郵便受けを見てみる。
1階は101から105号室まで。
2階は201から205号室まで。
3階は301から305号室まで。
そして、当然、4階も401号室から405号室まである。
もう一回、4階に戻って、プレートを確認する。
俺の隣の部屋はちゃんと405号室になっている。
だから、もう一度、4階のプレートを見ながら歩く。
401、402、404、405。
やっぱり403号室がない。
かといって、403号室のドアを壁で埋めたというわけでもなさそうだ。
402号室と404号室の間には、1部屋分のスペースなんてない。
だから、俺は一度、1階に降りてみた。
そして、プレートを見ながら歩く。
101、102、103、104、105。
ちゃんと5部屋ある。
2階も3階も同じように5部屋ある。
4階だけが4部屋しかない。
なんだこれ?
ものすごい不気味だったけど、もう夜だったから、紹介してくれたおじさんに電話するわけにもいかない。
だから次の日の朝に電話しようと思った。
だが、いざ朝になっておじさんに電話しようとした時、異変に気づいた。
だけど、おかしい。
おじさんの名前も顔も思い出せない。
スマホの連絡先を見ても、載ってない。
確かに登録したはずなのに。
それで母さんに電話してみた。
そしたら、そもそも俺におじさんなんていないと言われた。
そう言われれば、確かにそうだ。
小さい頃の記憶を辿っても、おじさんの記憶なんてない。
だから、とにかく、今度は不動産の会社に電話をした。
すると電話越しに「何を言ってるんですか?」と言われてしまった。
そりゃそうだ。
部屋が一つ足りないなんて話、信じるわけがない。
俺は混乱した。
とにかく、誰かにこの話を聞いてほしくて、友達に電話しようとした。
でも、友達の連絡先が出てこない。
それどころか、友達の顔も思い出せない。
なにがなんだかわからないまま、バイトの時間になった。
バイト先に行くと、店長が「ここは事務所ですよ。関係者以外は立ち入り禁止です」と言われた。
俺はバイトですと言おうとした。
だけど、そんなわけないと追い返されてしまった。
帰り道、確かにあのお店でバイトをしていたときの記憶がぼんやりとしてくる。
本当に、あそこでバイトをしていたのか自信がなくなってきた。
そして、それからは何もする気力がわかず、夏休みの間ずっと部屋の中で過ごした。
夏休みが終わり、大学へと向かう。
すると、警備の人から学生証の提示を求められた。
俺はカバンから学生証を出そうとしたが、見当たらない。
そこで、大学の事務に相談に行った。
そしたら、大学の学生の中に俺の名前はないと言われた。
俺はすぐに親に電話しようと思った。
でも、俺のスマホの中に親の番号がない。
そして、親の顔もぼんやりとしか思い出せない。
もう何も考えたくない。
俺はそのまま部屋に帰った。
それで、今もドンドンと記憶がなくなっていく。
俺は今までどう生きてきたんだろう?
というより、そもそも俺なんて、初めから存在していたのかさえ怪しく思えてきた。
でも、もう、どうでもよくなってきた。
考えるのも面倒になってきたから。

