本編
俺は孤児院で働いている。
元々は、俺もここの出身で、この孤児院には一生かかっても返せないほどの恩がある。
なので、俺はこの施設をより良くするため、日々、頑張っている。
子供たちにとっても、ここは最後の拠り所であるし、帰るべき最高の場所だと思って欲しい。
だが、ここに住む人間全員がそう思っているわけではない。
ここを嫌っている人間や、何も考えずここに迷惑をかける子供もわずかながら存在する。
そんな一部の人間のせいで、孤児院全体に迷惑がかかる。
しかし、そんな人間はどうやっても変えることはできない。
こっちがどんなに心を砕いて接しても、まったく意味がないのだ。
それは俺だけじゃなく、職員や子供たちも同じように思っている。
なら、どうするか?
それは排除するしかない。
排除は、この孤児院をよくするための必要な犠牲だ。
俺はこの孤児院のことを一番知っている。
そして、職員のことも子供たちのことも、誰よりも把握している。
だからそれを利用して、邪魔なやつを排除していく。
孤児院には常に人がいる。
嘘の付けない子供も大勢いる。
だが、意外と誰も見ないような死角も存在する。
そこにターゲットを誘い込んで、排除する。
そうすれば、目撃者がいない上に、俺のアリバイも確保できる。
だから、仮に死体が発見されても、俺は容疑者から外れるというわけだ。
この方法で、俺は今まで23人の邪魔な人間を排除した。
そのおかげか、孤児院には邪魔な人間がいなくなり、理想の場所になった。
他の職員や子供たちも、最近は孤児院の雰囲気が良くなったと喜んでいた。
これでもう、排除する必要もなくなった。
なぜなら、もうこの孤児院には邪魔な人間は1人もいなくなったのだから。
そう思っていたときだった。
俺は突然、警察に逮捕された。
もちろん、殺人容疑だ。
俺は今まで、完全に警察の裏を取っていたと思っていた。
だが、それは完全に間違いだった。
警察は俺が行った23人の排除の証拠をそろえていた。
そこで俺は気付いた。
あの孤児院で俺は邪魔な人間だったのだと。
終わり。
■解説
語り部は23人を殺害していた。
職員たちはその事実に気付きながらも、孤児院に迷惑をかける人間が次々といなくなっていくため、あえて警察へ通報せず様子を見ていた。
そして、語り部によって「邪魔な人間」がすべて排除されたあと、最後に殺人犯である語り部自身を警察へ通報した。
つまり、孤児院にとって最後の「邪魔な人間」は語り部自身だったのである。

