本編
今、目の前で俺の葬式が行われている。
参列者は多いが、悲しんでいる奴はほとんどいない。
というより、笑顔のやつさえいる。
俺の遺影の写真のように。
それもそうだろう、と自分ながら思ってしまう。
それくらい、俺は周りに不快な思いをさせてきた。
もし、俺が逆の立場だったとしたら、殺していたかもしれないくらいだ。
それにはもちろん、理由がある。
なんて言うところも、嫌われる理由の一つになるだろう。
俺には双子の弟がいた。
弟はハッキリ言って、俺とは真逆の人間だ。
頭も、運動神経も、性格も良く、人懐っこい。
弟の周りにはいつも人が集まっている。
そんな弟を、俺は疎ましく思っていた。
顔は同じなのに、正反対の人間。
それは俺だけじゃなく、周りも思っていたことだ。
だから俺は周りに当たり散らした。
弟と比べられるたびに、暴れて回った。
本当に最低の行動だったと思う。
そんな俺を、弟はいつもフォローしていた。
俺が、周りに嫌われないように。
それが返って、俺の心を苛立たせた。
俺はずっと弟への憎しみを積もらせ続けていた。
弟がいなければ、俺はもっと違う人生を歩めたはずだと。
弟と比べられることさえなければ、俺の心は荒ぶることはなかった。
だから、全部、弟が悪い。
そう結論付けた。
そして、俺はいつしか弟を殺そうと考え始める。
その計画を数年かけて、立てていた。
弟の行動を完全に把握し、どんなイレギュラーにも備えられるように、キッチリと準備した。
計画は完璧だったと思う。
そして、俺はその計画を実行した。
その結果が、今日の、この葬式だ。
正直に言えば、後悔してないかと言えば嘘になるが、満足はしている。
これでよかったのだろう。
いや、そう思わないとやってられない。
俺が死んだことで、喜んでいる奴がいる。
それでいいじゃないか。
そう納得するしかない。
俺という人間の人生は終わった。
それは受け止めなければならない。
終わってしまったことは、戻らないのだから。
もう一度、遺影の、俺の写真を見る。
あんな笑顔なんて浮かべたことがあったのかと、自分でも意外に思う。
そんなことをぼんやりと考えているときだった。
後ろに座っている男が、俺にこう囁いた。
「お兄さん、残念でしたね」
俺は内心、ため息をつく。
心にもないことを言ってやがる。
終わり。
■解説
最後、後ろに座っている男性は、『語り部』に言葉をかけている。
ということは、語り部は幽霊で、自分の葬式を見ているわけではない。
だが、葬式が行われているということは、『誰かが死んでいる』はずである。
では、一体、誰が死んでいるのだろうか。
語り部は弟の殺害計画を練っていた。
つまり、語り部は弟を殺し、弟に成りすまして、自分の葬儀に出席しているのである。
