〈前の話へ:誘拐犯が警察を呼ぶ件について〉 〈次の話へ:虐待の形〉
俺とタカシとカオリは幼馴染で、小さい頃からずっと一緒だった。
学校でも、放課後でも、休みの日でも、一緒にいるのが当たり前でそれが続くと思っていた。
実際、俺たちは大学まで同じ学校に進学し、同じ時間を過ごした。
でも、その関係は一瞬で、あっさりと崩れることになった。
タカシがカオリに告白すると言い出したのだ。
もちろん、俺もカオリのことが好きだった。
でも、それ以上に、今の、この関係の方が大事だったんだ。
それはタカシもカオリも同じだと思っていた。
それなのに、タカシが裏切った。
普通だったら、親友にならカオリを託してもいいと思うかもしれない。
だが、俺は違った。
誰よりも、とにかくタカシだけにはカオリを取られたくなかったし、カオリにもタカシを選んで欲しくない。
カオリは、俺たち以外の誰かと付き合ってほしかった。
そうすれば三人の関係は壊れないと思っていた。
なのに、タカシだけじゃなくてカオリまで俺を裏切るようなことを言った。
なんと、タカシに告白されたと、俺に相談してきたのだ。
いや、相談というより、告白を受ける許可を貰いにきたような感じだった。
つまりはカオリはタカシと付き合うことになる。
俺はどうしても許せなかった。
カオリは、もし、俺の方が先に告白してきたら、それを受けるつもりだったと言った。
でも、そんなことはどうでもいい。
この関係をあっさりと壊した2人を許せない気持ちでいっぱいだった。
俺はタカシを殺した。
もちろん、逃げるつもりはない。
結局、俺も3人の関係を壊したのだから。
当然、その報いを受けるつもりだ。
だから、そのまま交番に向かい、自首したんだ。
今考えれば、電話をして警察に来てもらえばよかった。
でも、そのときの俺は、やっぱり冷静じゃなかったんだと思う。
ただ、交番に行って、現場に戻るまでは10分もかかってないはずだ。
それなのに、タカシの死体がなくなっていた。
辺りを探しても、どこにも見当たらない。
死体を引きずった跡もない。
それどころか、後頭部を殴って、血が出ていたはずなのに血痕も残っていなかった。
そうなると、警察は俺を逮捕することができない。
ただの悪戯だと思われた。
もしかしたら、誰かが現場を見ていて、俺をゆするために死体を隠したのかとも考えた。
だが、1ヶ月が経った今でも、誰も俺に対してコンタクトを取ってこない。
そして、何よりも不可解なのが、タカシが消えたことに関して、誰も何も言わないことだ。
カオリや、タカシの親でさえも、何も気にしていない。
「そういえばいないね」くらいの言い草だ。
訳が分からない。
俺はただ、タカシを殺したことと、3人の関係を壊した償いをしたいだけなのに。
俺はなんとかタカシの死体を見つけだそうと必死に探した。
それなのに、見つからない。
焦る俺に対して、カオリが付き合って欲しいと告白してきた。
もちろん、受けるつもりはない。
俺は罰せられないといけない立場なのだから。
一時は自分で命を断とうとも考えた。
でも、タカシのことを考えれば、それはできない。
俺はカオリや、タカシの親からも恨まれなくてはならない。
死ぬよりも辛い思いをしなければ、タカシに顔向けできない。
だからお願いだ。
タカシの死体を隠している奴がいるのなら、返してくれ。

