【洒落怖】駅員が掃除しない理由

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知り合いのSが行方不明になった。

といっても、Sとは、そこまで仲がよかったわけじゃない。
前の職場で一緒だったということもあって、ときどき、連絡を取り合ってたくらいだ。

1年に1回、飯を食いにいく程度の仲。
そう考えると、ギリギリ友達ともいえなくないのかな?
友達がいない人間からすると、その辺の線引きがよくわからない。

ただ、それはそこまで重要なことじゃないから、置いておくことにしよう。

突然、Sのアカウントから、Sの母親と名乗る人から連絡が来た。
息子と連絡が取れなくなったのだけれど、知らないかというものだ。

Sと最後に会ったのは大体半年前。
その頃、特にSには変わったことはなかった。

だからそのことをSの母親に伝えた。
Sの母親の話では、会社にも連絡してみたが、本当に突然、出社してこなくなったのだという。
そもそも、会社から母親に連絡が行き、Sが行方不明になったことが発覚したらしい。

力になれるならなりたいところだが、正直言って、Sがどこにいるかなんて想像もつかない。
前回会った時も、本当に変わったところもなく、特に悩んでるようなこともなさそうだった。

ただ、気になることといえば、電車とホームの間に子供が見える、なんてことを言ってたくらいか。
電車のドアが開いたときに、ホームと電車の間の隙間が見える。
その隙間からジッと子供が見ているのだとか。
そして、その子供は時々、電車に乗り込もうとする人を、隙間に引きずり込むとSは言っていた。

そのときはただの怪談話だと思って聞いていた。

もしかしたらSはその子供に、ホームと電車の間に引きずりこまれたのかもしれない。
とはいえ、こんなことをSの母親に言うわけにもいかないので、黙っておいた。

言ったところで、どうしようもないし、こっちの頭がおかしいと思われて終わりだ。

そんなことを考えていると、ついつい、ホームと電車の間を見てしまう。
今まで気にしたことさえなかったのに。

それで、電車のドアが開いたときに、チラッと隙間を見た。

もちろん、子供なんて見えない。
だけど、代わりに思ったのは「結構汚いな」だった。

ゴミとか散乱している。

イメージ的には毎日、掃除してるのかと思ってたけど、そうじゃないらしい。
考えてみたら、全ての駅の、あんな場所を掃除なんてしていたらキリがない。
放置されるのも当たり前だろう。

そんなふうに思って見ていた。
そして、ドアが閉まる瞬間だった。

妙なものがチラリと見えた。

それは――手だった。

人間の。

手首がホームの下に落ちてたのだ。

いや、そんなのはあり得ない。
もしかすると電車に轢かれた人のものが残っているのかも。
でも、そんなことあり得るんだろうか?
それに調べてみたけど、今日は人身事故なんてなかった。

だから、きっとただの見間違いだろう。
そうに違いない。

Sの怪談話を聞いたから、きっと何かのゴミがそう見えてしまっただけだ。

そう思っていると、電車は次の駅に到着する。
ドアが開いて、人が乗り降りしていく。
そして、ドアが閉まる。

その瞬間、今度は足みたいなのが落ちているのが見えた。

靴を履いていて、ズボンもはいた状態で。
ドアが閉まる一瞬のことだったから、あれ右足なのか左足なのかはわからない。

でも、どう見てもあれは足だった。
靴は革靴で、ズボンはスーツっぽい感じに見えた。

ただ、血のようなものも付いてなかったし、人間の足というよりは人形の足みたいだった。

きっと、人形のはずだ。
そうに違いない。
あんな大きなものを駅員が見逃すわけがない。

とはいえ、さすがに片付けてくれよと思う。
見る人が見ればトラウマになりそうだ。

そして次の駅。

よせばいいのに、またホームの下を見てしまう。
嫌な予感がしていたが、的中した。

今度は腕だった。
そしてその次は腰、足、胴体と続く。

次は降りる駅だ。

今日は色々あって疲れているんだと思う。

帰ったらそのまま寝よう。
食欲もないし。

降りる駅に到着する。

ホームの下を見ないようにと思っていたのに、見てしまった。
降りる瞬間に電車とホームの間を。

そこには――頭があった。

Sの。

完全に目が合った。
無表情で虚ろな目だ。
まるで人形のようだった。

そのまま逃げるように駅を出る。

落ち着いて、冷静になって考えてみる。
あれは絶対にSじゃない。
なぜなら、Sとは乗る路線が違う。

万が一、Sが事故に遭ったとしても、あそこに死体があるわけがない。

あれは絶対に何かの見間違えだ。
Sの怪談話とSの行方不明が重なって、そういう風に見えただけとしか考えられない。

そして、次の日は会社を休んで自転車を買いに行った。

いつもより1時間は早く起きなくてはならないが、自転車通勤にすることにした。