本編
この村には昔から、『祈り紙(いのりがみ)』というものが存在する。
村に代々世襲される巫女が、紙に力を込めるのだ。
その祈り紙で追った、折り紙は不思議な力を持ち、持ち主を守ってくれる。
だから、この村では折り紙を飾っていない家はないし、折り紙を持ち歩いていない村の人間もいない。
何年か一度は、他の場所から村に引っ越してきて、祈り紙のことを信じない人間がいる。
その人間は例外なく、災いが起こり、村から出て行っている。
この村で、祈り紙のことを信じてない人間はいないだろう。
もちろん、僕を含めて。
あるとき、僕のクラスのTくんが事故に巻き込まれて、意識不明の重体になった。
Tくんはクラスの人気者で、みんなから慕われていた。
そこで、Tくんと一番の仲良しのSくんが、『祈り紙(いのりがみ)』を使って千羽鶴を折ろうとクラスのみんなに提案した。
『祈り紙(いのりがみ)』は数があればあるほど、力が大きくなる。
千羽鶴を折って、Tくんの病室に飾れば、絶対に元気になるはずだとSくんが言い、クラスのみんなはやろうと盛り上がった。
その放課後、クラスのみんなが『祈り紙(いのりがみ)』を用意して、みんなで鶴を折り始める。
僕ももちろん、『祈り紙(いのりがみ)』で鶴を折る。
僕は鶴を折りながら、チャンスだと思った。
なぜなら、千羽鶴はちゃんと千羽なら効果が抜群だけど、一羽足りない、999羽だと返って呪いになるという話があるからだ。
Tくんはクラスでは人気者だけど、陰では僕をイジメていた。
だから、僕はTくんがこのまま目覚めないで、死んでほしいと思っている。
夜の10時になって、ようやく千羽鶴は完成した。
Sくんは何度も何度も、一人で数を数えていて、ちゃんと千羽あると満足そうに言っていた。
みんなが帰ったあと、僕はこっそりと教室に戻った。
そして、僕は千羽鶴を1羽取って捨てた。
これで千羽鶴は999羽になったから、呪いになって、僕の願いは叶うはずだ。
次の日の朝。
千羽鶴はTくんの病室に届けられ、クラスのみんなはTくんが目を覚ますように祈った。
しかし、Tくんは目覚めなかった。
Tくんが目覚めたのは1週間後で、左手に少し障害が残った。
クラスのみんなは、千羽鶴が効かなかったのかと驚いていた。
僕は千羽鶴が呪いになったはずなのに、Tくんが死ななかったことに驚いた。
やっぱり、『祈り紙(いのりがみ)』なんてただの迷信だったんだろうか。
終わり。
■解説
『祈り紙(いのりがみ)』が迷信だったという可能性はもちろんある。
しかし、こうも考えられる。
それはSくんがTくんの人気を妬んでいて、最初から『999羽』にして、Tくんに渡そうとしていたという可能性だ。
Sくんは何度も千羽鶴を数えていたことから、999羽だと呪いになるという話を知っていたと思われる。
つまり、最初から千羽鶴は999羽であり、語り部がそこから1羽を取ったことで998羽となり、呪いにもならずにTくんは完全に回復することなく、障害が残る形で終わったのかもしれない。
