本編
彼女のことは、中学生のときに出会ってからずっと一途に思い続けてきた。
だから私は、彼女の近くにいたいと願い、高校も大学も、彼女と同じ学校に進学した。
そんな彼女とはあまり話すような間柄ではなかったが、遠くから見ているだけで幸せだった。
彼女の幸せこそが、私の幸せなのだ。
私は彼女のためなら私の人生なんて投げ捨ててもいいとさえ思っている。
当然のことだ。
だから彼女の幸せを奪うようなやつはどんな人間でも許さない。
彼女を見守るだけで満足だったのだが、あることがきっかけで、私は彼女と付き合うことになった。
彼女のそばにいられる時間が、こんなにも幸せだとは思いもしなかった。
その幸せを守るためにも、私は努力を惜しまないつもりだ。
私に幸福を与えてくれた彼女には、彼女を幸せにすることで返そうと思っている。
だが、あるとき、彼女が思い悩んでいることに気付いた。
どうやら、彼女にストーカーがつきまとっているようだ。
私に心配をかけまいと黙っていたのは、実に彼女らしい。
彼女の結婚式も間近だ。
それまでにストーカーを排除しておきたい。
そんな状況では、私の、タクシーの運転手という職業はかなり役に立つ。
彼女と親しい人間を乗せた際に、それとなく話も聞けるし、なにより彼女の家の近くにいても怪しまれない。
ただ、それは本当に地味な活動で、なかなか成果はあがらなかった。
だが、ついにそのときは訪れた。
前々から怪しいと思っていた人物が私が運転するタクシーに乗り込んできた。
そして、行先を彼女の家だと言ってくる。
私は確信した。
この人間こそ、彼女のストーカーなのだと。
だから、私はこの人間を始末した。
彼女は泣いて喜んだ。
私は手を汚すことになってしまったが、満足している。
今回のことで結婚式はなくなってしまったけれど、また計画すればいいだけだ。
今度こそは、本当の結婚式を。
終わり。
■解説
語り部こそがストーカー。
妄想癖があり、彼女と付き合っていると思い込んでいた。
そして彼女と結婚するはずだった男を殺し、今度は自分との結婚式をあげられると思い込んでいる。
