〈前の話へ:タイムカプセル〉 〈次の話へ:人を殺す呪いの本〉
本編
最近のAIの発達は物凄いものがある。
数年前なんて、ちょっと便利な検索エンジン程度だった。
しかも、嘘を教えられることだってあったくらいだ。
だけど、今は違う。
AIは何でも答えてくる。
こっちが多少変な文章だったとしても、ちゃんと意図をくみ取って教えてくれるのだ。
ただ、時々、嘘や間違ったことを返してくるときもある。
だから使うときはちゃんと情報の裏取りをしなくてはならない。
ちゃんと正しいかどうか、確認しなくてはならない。
だけど、正直に言って、面倒くさい。
いちいち調べるくらいなら、最初から自分で調べた方が早い気がする。
そんなとき、先輩からある生成AIのアプリを教えてもらった。
そのアプリのAIはかなり精度が高く、嘘を教えることなんて全くない。
しかも答えがはっきりと決まっているものだけじゃなく、正しい答えのない2択でも、ちゃんと答えてくれる。
もちろん、論理的ではあるが、どこか勘のようなものを発揮して、必ず私にとっていい選択肢を選んでくれる。
そのおかげで、生活が本当に楽になった。
迷ったことがあれば、全部AIに聞けばいい。
そうすれば間違いない。
必ず正解を教えてくれるなんて、なんて便利なんだろう。
AIの指示にしたがっていれば、これからの人生は安心だ。
そして、このAIは選択肢を答えるだけじゃなく、ちゃんと悩み事も聞いてくれる。
もちろん、ただ、聞くだけじゃなく、どうすればいいのかの方法も一緒に教えてくれるのだ。
あるとき、私は学校の1つ上の先輩のことが好きだから、どうすればいいかを聞いた。
すると、AIは『諦めた方がいい』と言ってきた。
これには、かなり驚いた。
今までは私が望むような解決方法を教えてくれていたのに。
だから、私はAIに「絶対に諦めたくない。教えて欲しいのは付き合う方法」と打ち込んだ。
するとAIは『それでも諦めた方がいい』と返してきた。
「なんで?」と聞くと、AIは『その先輩は既に付き合っている人がいます』と返ってきた。
そんなわけはない。
なぜなら、先輩からそんなウワサなんて一度も聞いたことがなかったからだ。
頭にカッと血が上った私は『仮に付き合っていても、それでも先輩と付き合えるようにしてほしい』と打ち込んだ。
AIは『わかりました』と言い、具体的な指示をくれた。
もちろん、私に拒む理由はなかったし、AIがやれというならやらないと先輩とは付き合えないと思ったので、AIがいう方法を実行した。
おかげで、先輩はフリーになったし、彼女と別れたことでかなり落ち込んでいた。
そこを優しい言葉をかけることで、先輩の気持ちは私に向いてきている。
やっぱりAIの言うことは正しい。
勇気を出して、実行してよかった。
ただ、そのことで、私は警察に追われることになってしまった。
AIの言う通り、家を出た次の日に、警察は私の家にやってきていた。
本当に危ないところだった。
絶対に警察には捕まりたくない。
せっかく先輩と付き合えそうなのに。
だからAIに「絶対に警察から逃げ切れる方法を教えて」と頼んだ。
AIは『わかりました』と答え、ビルに登るように指示してきた。
もちろん、私は指示通りにビルの屋上へと向かう。
屋上についた私はAIの指示通り、金網をよじ登ってジャンプした。
AIの言う通り、私は完全に警察から逃げきることに成功した。
終わり。
■解説
語り部はビルの屋上から飛び降り、死ぬことで警察から逃げ切った。

