本編
俺が大学に通う為に実家を出て、一人暮らしを始めてすぐのときだった。
急に両親から家を買ったという連絡が来た。
なんでいきなり家なんて買ったのかと聞いたら、俺が家を出るということで、2人で住むには今の部屋は広すぎると考えたらしい。
それで、手頃な場所に引っ越そうと思っていたときに、格安で一軒家が売りに出されていたので、それに飛びついたということだ。
自分たちの家が手に入るということで、深く考えずに購入を決めたらしい。
一軒家なんて、俺が家にいたときよりも広くなるし、本末転倒になってしまうが、そこはうちの親らしいところと思うのだが。
そして、家の方は若干のリホームはされているが、この家の裏には割と大きな倉庫というか収納スペースがあるらしいのだが、そこに関しては整理されていないのだという。
格安なので、仕方ないと、両親はそのまま、倉庫の中にある物まで引き取ったらしい。
とはいえ、業者に依頼するのも時間がかかるし、自分たちじゃ大変だからと言って、夏休み中の俺に片付けをして欲しいと言ってきたのだ。
最初は面倒くさいと思って断ろうと思ったが、5万出すと言われて飛びついてしまった。
夏休みは特に予定もなく、暇になるだろうというのもあったのだが。
新しい実家に行くと、思っていたよりも古い感じもなく、逆に新しい感じがして、すごくよかった。
両親がすぐに購入を決めたのもわかる気がする。
そして、家の裏にある倉庫だが、これも俺の予想に反して、割と大きかった。
一人だと、絶対に1日じゃ終わらない。
というより、一週間はかかりそうだ。
これで5万は安いんじゃないかと思う。
とはいえ、一度引き受けたのだし、5万は魅力的だった。
実家にいてもやることはないので、俺はコツコツと倉庫の整理を始める。
正直、最初は面倒くさくて、引き受けたことを後悔したくらいだった。
だけど、作業を進めるうちに段々と、その気持ちはなくなっていく。
というのも、倉庫には『お宝』が満載だった。
別に、貴金属とか高価な物があるわけじゃない。
『懐かしい』ものが溢れていたのだ。
小学校の頃にハマっていた漫画や雑誌、おもちゃなどがドンドン出てくる。
懐かしいと思って、読み始めると止まらなくなる。
一人暮らしをするために自分の部屋を整理しているときのことを思い出す。
あのときも、なかなか作業が進まなかった。
下手をすると、1日、漫画を読んで終わったり、おもちゃを眺めて終わったりもした。
今が夏休みで本当に良かった。
最初は面倒くさいと思っていたのに、今では倉庫の中に行くのが楽しみになっている。
さて、今日はどんなお宝が出てくるかな。
そんな風に思いながら、倉庫の中を漁っていく。
すると、中から一冊のアルバムが出てきた。
何気なく開いてみると、一気に懐かしい思い出が蘇ってくる。
そこには写真だけじゃなく、当時の新聞記事なんかも貼ってあった。
愛知万博、夏の甲子園の早稲田実業と駒大苫小牧との歴史的な死闘、トリノ五輪、サッカーW杯ドイツ大会、ライブドア事件。
どれも本当に懐かしい。
そんな中、一枚の写真が目に入る。
家族で撮った記念写真。
これは温泉旅行で撮った写真だ。
さすがにこれは捨てられない。
俺はアルバムを脇に置いて、倉庫の整理を再開した。
終わり。
■解説
語り部が整理しているのは、両親が『買い取った』倉庫。
つまり、『他人が使っていた』倉庫である。
そこに、『語り部の家族』の写真が貼ってあるアルバムがあるのはおかしい。
一体、この倉庫は何者が使っていたのだろうか。

