絶対に返事をしてはいけない

意味が分かると怖い話

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本編

ワタシはホラー作家をしている。
売れっ子とはお世辞にも言えず、量を出すことで何とか食いつないでいるという状況だ。

なので、いつも『ネタ』探しに必死になっている。
怪談話はもちろん、都市伝説やちょっとした噂にもアンテナを張る。
一見、関係ないことだと思っていても、意外とホラーに繋げられたりするのだ。

そんな中、あるキャンプ場の噂を耳にした。

そのキャンプ場は山の中にあるのだが、そこに猿のような妖怪が現れるのだという。
その妖怪は襲ってくるわけでもなく、単に話しかけてくるだけらしい。

そして、話しかけられたら、絶対に無視しなくてはいけない。
答えてしまうと必ず不幸になるというのだ。

ある人は、返答してしまったことで、帰り道に事故に遭って死んでしまったらしい。

しかし、猿の妖怪が出てきた時点で、十分怖い。
見れば、噂を知らなかったとしてもほとんどの人は逃げ出すだろう。

よくある怪談話だとは思ったが、何かの話のネタになるかもしれないと、ワタシはそのキャンプ場に行くことにした。

キャンプ場に着いてみると、噂のせいか、それとも山奥すぎるのか、全然人がいない。
正直、誰もいない、山の中で一人でキャンプをするという状況が既にホラーな気がしてきた。

とはいえ、ここで帰るわけにはいかない。
もしかすると、妖怪は出なくても、野生動物が出てくるかもしれない。
ホラーは何も妖怪や幽霊だけじゃない。
動物に狙われるというのも、十分、ホラー体験となるのだ。

そんなことを考えながら、テントを設置する。
寝袋を出して、寝心地を確かめていると、テントの外からおじいさんのような声がした。

「管理人なんだけど、今日はここでキャンプするのかい?」

そう話しかけられた。

「はい。あっ! 受付しないとダメですか?」
「いや、そうじゃなくて、注意喚起だ。他の人から話しかけられても、絶対に返事しちゃダメだよ」

どうやら、猿の妖怪のことを言っているようだった。

「その噂のことは知ってます」
「そう。それならよかった。じゃあ、気を付けて」

そう言い残して、管理人は去っていったようだった。

管理人が注意をしてくるくらいだから、もしかしたら本当に出るかもしれない。

そんな期待と恐怖が混じった気分で、一晩を過ごした。

だが、結局は何も起こらなかった。
猿の妖怪どころか、野生動物も、なんなら虫の声もなく、静かなものだった。

こんなものかとがっかりする。

山を出ようとしたところに、建物があり、そこに『管理棟』という看板を見つけた。

ワタシは一人でやっているという管理人のおばあさんに挨拶して、キャンプ場を後にした。

終わり。

■解説

語り部がテント内で話しかけられた、管理人を名乗ったのは『おじいさん』だった。
そして語り部はテントの中で受け答えをしていて、相手の姿を見ていない。
さらに、帰り際に寄った管理人はおばさんである。
もしかすると、テント内で話しかけられたのは、猿の妖怪だったのかもしれない。
そうなると、返答した語り部はこの後、不幸になる可能性が高い。