今までずーっと内緒にしてきたんだけど、これで最後だし、ここに書いておくことにする。
どうせ、誰も信じないだろうし。
正直、俺だって訳が分からなかったから。
一番最初は11年前の7月12日。
曜日は忘れた。
調べればわかるだけろうけど、面倒くさいし、曜日は別に関係ないからいいよね。
あ、でも、酒を飲んでたから多分、週末だったはず。
金曜か土曜かな。
まあ、いいか。
とにかくその日は泥酔してた。
行きつけの居酒屋で、一人で飲むのがそのときの、唯一の楽しみだった。
どんな理由だったかは忘れたけど、その日は結構、奮発して飲んだ。
仕事で嫌なことがあったのか、逆に良いことがあったのか。
俺は珍しく泥酔するまで飲んで、フラフラになりながら家に戻った。
着替えもせずに、そのままベッドに寝転がって寝てた。
で、明け方だったかな。
外は明るかった。
急激な吐き気がして、トイレに飛び込んだんだ。
そのまま吐いた。
でもさ、おかしいことに、吐いたものはほとんどが酒だった。
結構、食べたんだよ。
居酒屋でさ。
いくらなんでも数時間で消化するとは思えない。
なのに、固形物はほとんどなかった。
出たのは1つだけ。
それはね。
小指だった。
人間の。
左小指。
一気に酔いが冷めた。
だってはっきりとした形で、酔ってた状態だでも人間の指ってわかったんだからさ。
衝撃的だったよ。
当たり前だけど、そんなものは食べてない。
似たようなものも。
そのときはすぐに流した。
それで、あれはきっと手羽先かなんかだろうって思いこむことにしたんだ。
1ヶ月くらいは何かないか、警戒して生活してたけど、何もなかったら次第に忘れるようになった。
でも、次の年の7月12日。
その日は特に何も変わったことはなかった。
しいて言えば、いつもよりも早めに寝たくらいだと思う。
寝てたら、突然、吐き気がしてトイレに飛び込んで吐いた。
酒なんて飲んでなかったし、風邪もひいてなかった。
脂っこいものを食べたわけでもないし、腐ったものを食べたわけでもない。
なのに、吐いた。
で、吐いたのはほとんど胃液だった。
また、出た固形物は1つだけ。
左薬指。
それを見て、1年前のことを思い出した。
でも、思い出したからなんだってわけじゃない。
やったことは同じ。
そのまま流した。
証拠として残しておけよって言うやつがいるかもしれない。
でもさ、自分に置き換えて、とっておくやつって本当にいるか?
取っておいて、どうする?
どっかに持って行って、本当に人間の指かどうか調べてもらうのか?
そんなことしてさ、実際に人間の指だって判断されたらどうなる?
きっと警察とか呼ばれて調べられると思う。
それで、食べてないはずなのに吐いたんです、なんて言って信じてもらえると思う?
そうしないにしても、わざわざ取っておく?
なにかわからない、人間の指をさ。
とりあえず、次の週にお祓いに行ったよ。
それで、忘れることにした。
でも、次の年の7月12日。
また吐いた。
今度は中指だった。
ここまで書けば、もうわかるよね?
毎年、人間の体の一部を吐くようになったんだ。
次の年は人差し指で、その次の年は親指。
ここまでくるとさ、さすがに焦るよ。
年に1回とはいうけどさ、毎年、人の体の一部を吐くんだから。
色々、寺とか神社を回ったり、霊能力者とかにも会ったよ。
寺とか神社では、別に何にも憑いてないなんて言われることが多かったかな。
霊能力者にはいろいろ言われた。
やれ、悪霊だの、神様みたいなのが憑いてるだの、先祖の霊とか、前世の罪だ、なんて言うやつもいたな。
それなりに金を使ったよ。
でもさ、厄介なのが、効果があったのかどうかは、1年後しかわからないわけ。
だから、その霊能力者に文句を言いに行ったりもできない。
てか、連絡が取れるやつがほとんどいないっていうね。
ここまでくると、なんていうかな。
もうおかしくなってきて、面白半分になるよね。
親指の次は何が来るんだ? って。
そしたら、また小指だった。
でも、今度は足の小指。
左足の。
そして、足の薬指、中指、人差し指って続いた。
これは次の年は親指だろって思うよね。
でも違った。
次は何と、目だった。
目玉ね。
左の目。
あれは正直、トラウマ級だった。
指とかとは全然、衝撃が違う。
見た目がヤバい。
目だけにね。
今度は何なんだって思ったよ。
次はどこだ? ってなった。
でも、それがわかることがあった。
というのも、その次の日、俺は事故に遭った。
左側がほぼ全滅。
笑っちゃうのが、足の親指だけ無事だったらしい。
まあ、足自体切ることになったから意味はなかったけどね。
それが去年のこと。
なんでこんなことが起こったのか、何を意味するのかは全然分からない。
でも、なにを吐いてたのかはわかったから、何て言うか、そういう点だけはすっきりしたかな。
昨日まではね。
もう吐くことはないって思ってたんだけどさ。
吐いた。
これで俺の話は終わり。
信じるかどうかは任せるよ。
じゃあね、バイバイ。
