本編
今日は楽しみにしていた家族旅行だ。
例の感染症は数年前から落ち着いていたけど、何となくうちでは旅行へ行く足が遠のいていた。
だけど、仕事でちょっとした長い休暇が取れたので、せっかくだから親も誘って温泉宿に行くことにした。
うちの家族は6人家族で、子供たちもまだ小さいから、出かけるとなると結構大騒ぎになる。
しかも、今回は夜の便で出発だったから、準備の時間配分を間違えてしまった。
慌てて準備して、家を出る。
色々と準備不足で足りないものも出てくるかもしれないが、それは諦めてあっちで買おうということになった。
ギリギリで空港に行くと、親たちはすごくヤキモキしていて、小言を言われた。
今回ばっかりは、反論できない。
夜に出発するからと、夕方から準備を始めたのがいけなかった。
いつも通りに前の日に準備を終わらせておくべきだったのかもしれない。
とはいえ、間に合ったのだから、最悪な事態は避けられたのでまあ、許してほしい。
旅行自体は2泊3日で、温泉も宿もすごく良くて大満足だった。
子供たちも初めて行った動物園に興奮していた。
そんな子供たちを見ていると、また連れてきたいと思う。
来年も、近場でもいいから、旅行を計画してみようかな。
なんて思ってはいても、やはり疲れた。
俺も妻も、帰りの便の中ではぐったりしていた。
疲れた体を引きずりながら、ようやく我が家へと到着する。
着いたとき、俺と妻は顔を見合わせた。
なぜなら、家中の電気が煌々と付いていたからだ。
俺と妻は、まさか誰かが侵入しているのではないかと疑った。
静かに家に入って、中に誰か気配がないかを探る。
だが、その心配は杞憂に終わった。
中には誰もいなかったし、誰かが侵入したという形跡も全くない。
となると、電気を付けっぱなしで出て行ったという可能性が高い。
俺は出る前に、ちゃんと電気のスイッチを押したこととはハッキリ覚えている。
そこで、妻が笑い出した。
妻も電気のスイッチを押したというのだ。
つまり、妻がスイッチを押した後、俺がまたスイッチを押したということになる。
だから結局は電気を付けてしまったということだ。
電気代は勿体なかったが、逆に防犯としてはよかったのかもしれないと、妻と笑い合った。
終わり。
■解説
語り部たちが出て行ったのは『夜』である。
スイッチを押したときに電気が付けば気付くはず。
しかも、いくら急いでいたとはいえ、家中の電気が付いていればわかるのではないだろうか。
やはり、語り部が出て行った後に、何者かが電気を付けた可能性が高い。
