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意味が分かると怖い話

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本編

最近、近所で殺人が続いている。
狙われる人間は老若男女バラバラで、おそらく恨みや怨恨ではなく、規則性なく襲っているのだろうと予測できる。
 
また、犯人は人通りが少ない場所かつ監視カメラに写らない場所で犯行に及んでいる。
かなり徹底していて、被害者から指紋はもちろん、犯人の手がかりになるようなものが全く残っていない。
犯人に狙われて生き残った人はいないし、目撃情報もない。
周りの状況だけではなく、狙ったターゲットの行動もある程度調べた上での犯行のようにも思える。
 
そのため、捜査は全くと言っていいほど進んでいない。
多くの警察官を動員して見回りをしているが、それをあざ笑うかのように、手薄なところを狙われる。
 
そのせいで、今は警察が市民から非難されている。
 
悪いのは犯人なのに、捕まえる側が非難されると言うのもなんだか変な感じがするのだが。
 
捜査が行き詰まり、警察全体の士気が落ちている中、ある情報が入って来る。
それは、なんと殺害現場を見たという目撃者が出てきたのだ。
 
物陰に隠れていたおかげで犯人に見つからずに済んだのだと言う。
そして、その目撃者はかなり詳細なところまで覚えていた。
犯人の性別、年齢、顔、背格好、凶器はもちろん、どんな風に殺害したかも語ってくれた。
映画帰りの女性を後ろから口をふさぎ、アイスピックで一刺ししたのだという。
返り血も極力浴びないようにしていることから、かなり手慣れているようだ。
 
だが、この目撃者のおかげでモンタージュも作れた。
これで犯人逮捕も近いだろう。
 
終わり。

■解説

目撃者は殺害現場を見ていたはずである。
では、なぜ、被害者が「映画帰り」だとわかったのだろうか。
目撃者ではなく、犯人の可能性が高い。
そのためモンタージュもデタラメということになる。

 

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