本編
挨拶は大事。
お母さんにずっと言われてきたことだ。
おはよう、いただきます、ごちそうさま、こんにちは、おやすみなさい。
この5つは必ず言うようにしている。
お母さんも、もちろん言っているし、言わなかったら怒られるほどだ。
そのおかげか、結構、まわりからは挨拶が出来て偉いと評価されていた。
でもそんなとき、僕は事故を起こして下半身不随になってしまった。
それから僕はお母さんに介護してもらう日々になる。
毎日、必死に介護にしてくれるお母さんには感謝しかない。
僕は5つの挨拶に、ありがとうとごめんなさいを付け加えるようにした。
どんなに小さいことでも必ずありがとうと言うことにしたのだ。
これにはお母さんも喜んでくれた。
お母さんの言う通り、やっぱり、挨拶はとても大事だ。
今日も朝起きると、部屋にお母さんがいた。
もちろん僕はお母さんに「おはよう」と挨拶をする。
するとお母さんは笑顔でこう言った。
「おやすみなさい」
終わり。
■解説
なぜ、母親は起きたばかりの語り部に「おやすみなさい」と言ったのか?
それは母親が介護疲れで、語り部を永年に眠らせようとしているのかもしれない。