本編
少し前に異世界に行く方法というのが流行った時期があった。
飽きたと書いた紙を枕の下に置いて寝るとか、電車をある順番で乗り継ぐとか、合わせ鏡とか。
でも一番有名なのがエレベータだと思う。
エレベータに乗って、4階、2階、6階、2階、10階、5階に行くって方法だ。
俺も当時は面白がって何度かやってみたけど、一度も成功したことはなかった。
まあ、当然だけどね。
ただ、異世界に行く方法の流行りが下火になってきて、もうみんなの興味がなくなったし、俺も忘れてた頃だった。
近くのビルで「本当に異世界に行ける」って噂を聞いた。
そのビルは廃ビルかってくらい、全然人がいないらしい。
それなのにエレベータはちゃんと動くみたいだ。
異世界に行く方法でエレベータは途中で人が乗ってきたら失敗だから、成功しやすいのかもしれない。
さっそく、友達と一緒に試してみることにした。
夕方の5時なのに、本当にビルの中には誰もいなかった。
それだけで凄く不気味に感じる。
一人だったら帰ってたと思う。
でも、友達と一緒だから、つい強がってしまう。
たぶん、友達もおんなじだったんだと思う。
明らかに怖がってるのに、平気だと言って、引くに引けない状況になってしまった。
で、一人ずつ試すことした。
元々、一人でしかできない方法だから当たり前なんだけど。
まずは友達が先にエレベータに乗っていった。
俺はエレベータのランプをじっと見守る。
4階、2階、6階、2階、10階とエレベータが止まっていく。
そして、5階で停まった。
ドキドキして見てると、また動き出して1階へと戻ってくる。
ドアが開くと、友達がいて、笑いながら「全然ダメだった。異世界なんて行けないって」と言ってきた。
俺はホッとして、友達が降りた後、エレベータに乗る。
4階、2階、6階、2階、10階と順番に停まるようにボタンを押す。
少し緊張しながら、5階のボタンを押した。
エレベータが降りていく中、少しだけ不安になる。
大丈夫だと自分に言い聞かせながら心を落ち着かせる。
そして、5階で停まってドアが開いた。
すると、そこに友達が立っていて、泣きそうな顔をしてエレベータに乗ってきてこう言った。
「マジで異世界に繋がってた」
終わり。
■解説
さっき、1階に降りてきた友達は一体、何者なんだろうか。

