本編
男は容姿が良く、高校生になる頃には既に女遊びが酷い状態だった。
常に何股もかけ、付き合う女の子をひっきりなしに変えている。
そんな男のことをよく思わない人間は男も女も数多くいた。
しかし、それでも容姿がいいことと、手馴れているということもあり、男に引っかかる女は後を絶たなかった。
そして、男は何股もかけていることを隠すのが上手かった。
曜日でローテーションを組み、いつ、だれと、なにをしたかを頭にしっかりと叩きこんでいた。
なので、男は修羅場に巻き込まれることはほとんどない。
その日もローテーションにしたがって、女の家へと向かう。
男は女の家の合鍵を持っているので、自由に入れる。
中に入ると女は出かけているのか、家にはいかなかった。
帰って来るまで待とうかと思っていた時に、机に日記が置いてあることに気づく。
開いて読んでみると、そこには男に出会ったときのこと、日々のデートのこと、そして、どんなに男のことを愛しているかが書かれていた。
読み進めていくうちに、女は自分が浮気されているのではないかと気づいたようだった。
そして、女は「明日、確かめてくる」と書いていた。
次のページをめくる。
すると、こんなことが書かれてあった。
『昨日、あいつが他の女とホテルから出てくるのを見た。やっぱり私はあいつに騙されていたんだ。私はあの男を許さない。明日、あの男の家に行って、あいつを殺してやる』
男は青ざめ、すぐに女の家から飛び出す。
明日、家に女がやってくる。急いで遠くに逃げないと。
そう思い、男は荷物をまとめるために家へと戻った。
終わり。
■解説
日記に書かれている「昨日」とは、男が日記を読んだ日から見て、前の日とは限らない。
ということは「明日」というのも、男が日記を読んだ次の日とは限らないことになる。
もし女が、この日記を書いたのが「昨日」であれば、女は「今日」、男の家に殺しに行くわけである。
男は逃げる準備をするために家に戻った時に女と鉢合わせをして、殺される可能性が高い。