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玄関の鍵

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本編

深夜の1時過ぎ。

最近は仕事の時はいつも、このくらいの時間になる。
終電ギリギリで、慌てて電車に飛び乗ることも多い。

早く転職したいと思うが、そんな時間もないし、今の仕事は潰しが利かないし厳しいだろう。
結局はそう思いながらも、ズルズルと今の仕事を続けている。

そんなことを考えながら玄関のドアの前に立つ。

そして玄関の鍵を取り出そうとポケットに手を入れる。
しかし見当たらない。
焦って、反対側のポケットや後ろポケットを探すが、やっぱりない。

そうだ。
玄関の鍵を失くしてしまって、今日、新しくスペアキーを作ったんだった。

昼休みに取りに行っておいてよかった。
危うく、閉め出されるところだった。

こんなことも忘れるなんて、かなり疲れてるんだと思う。

俺はカバンから今日受け取ったスペアキーを取り出して、鍵を開けて中に入る。

本当に疲れた。
飯もシャワーも、着替えさえも面倒くさい。

もうこのままベッドに倒れ込んで眠りたい気分だ。

とはいえ、そうはいかない。
少なくても、飯くらいは食べないと体を壊してしまう。
それでなくても、今日はスペアキーを取りに行っていて、昼飯を食べてないんだから。

何かあったかなと思い、冷蔵庫を開ける。

しかし、驚くほど何もない。
最近は忙しすぎて、休日も買い出しに行かないでずっと寝てたから当たり前なんだけど。

さすがに次の休日は買い出しにいかないとな。

なんてことを考えていると、シンクの上に鍵が置いてあるのを見つけた。

ああ、そうだ。

二日前もこうやって、何かないかと冷蔵庫を開けたときに、鍵をここに置いたんだった。

あー、もう。
こんなことも忘れるなんて、本当にボケてるな。
疲れがピークなんだろう。

本当は有休を取って休みたいくらいだが、それができるような職場環境なら、今、こんなことにはなっていない。

下手をすると今週も休日出勤の恐れだってある。

本当に辞めたい。
もういっそ、今、流行りの退職代行サービスでも使おうかな。

なんて、できたら、もうとっくにやっている。
このまま時間だけが過ぎていくんだろうな。

それにしても、スペアキーを作って損したな。
本当に嫌になる。

終わり。

■解説

語り部は鍵を失くしたと思って合鍵を作っている。
ということは、朝は鍵をかけないで仕事に行っているはずである。
しかし、語り部は合鍵で鍵を開けている。
一体、誰が語り部の部屋の鍵をかけたのだろうか。

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