マルチ商法

意味が分かると怖い話

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本編

10年ぶりに高校のときの友達から連絡があった。
久しぶりに実家に返って来たから、一緒に飲もうと誘われた。

正直、そこまで仲が良かったと言われるとそうでもなかったが、懐かしいという気持ちが勝り、誘いに乗った。

最初こそ会話はぎこちなかったが、酒が進むのと高校時代のときの話で盛り上がったこともあり、高校の時よりも腹を割って話せた。
本当にいい奴だった。
高校の時は学校でしゃべる程度だけだったが、こんなことなら休日も一緒に遊べばよかった。
きっと楽しい高校生活になっていただろう。

とはいえ、終わったことを考えても意味がない。
俺たちはそのときのことがきっかけで、月に2回くらいは、飲みに行くようになった。

それから4ヶ月ぐらいしたときだっただろうか。
そいつが急に副業をやってみないかと誘ってきた。

金の話になったので、俺は冷めた。
こいつは騙すために俺に近付いてきたのかと思うと、腹立たしい。

一応、話をきいてみるとそれはマルチ商法というかねずみ講だった。

ふざけるな。

騙そうとしてきたこいつを殴りたいとさえ思った。
そして、そいつはさらに真面目な顔をしてこう言ってきた。

「俺に騙されたと思ってるんだろう? まあ、無理もないよな。これってねずみ講だし」

そんなことを飄々と言うこいつに対して、さらに怒りがわいた。
だが、そいつはこう続けた。

「この話は詐欺に近い。でもな。損するのは後から入った奴らだ。最初に入るやつは絶対に儲かる」

詳しく聞くと、その話は先月から始まったらしい。
しかも会員は俺で3人目だという。

売る品の品質は悪いが、ちゃんとマニュアル化もされていて、会員の紹介もスムーズにできそうだ。
なによりちゃんと時間をかけて会員に誘うという流れも好感がもてた。

これなら確実に儲かる。

俺はその場で会員となった。
勧誘の方法もしっかりと教わる。

俺は試しに、高校の同級生を誘うことにした。
そいつは高校の時はぼっちのやつで友達はいなかった。
だから高校の時、そいつと話したのは数えるくらいしかない。

勧誘のテストとしてはちょうどいい。

俺はそいつに電話をして、飲みに誘った。
マニュアル通りにことを進める。

そして頃合いを見て、俺はそいつの勧誘を試みる。
するとそいつはこう言った。

「僕、もうそこの会員だよ」

終わり。

■解説

語り部が誘った同級生は友達がいなかった。
そんな同級生が、既に会員になっている。
ということは騙されているのは語り部ということになる。
つまり、語り部が会員で3人目というのが嘘。
友達がいない同級生でさえ先に会員になっていることから既に会員は多いことがわかる。
語り部はこの後、損をする可能性が高い。