アンドロイド

意味が分かると怖い話

〈意味が分かると怖い話一覧へ〉

〈前の話へ:マトリョーシカ〉   〈次の話へ:寄生虫〉

本編

今では一家に一台、アンドロイドがあるのが普通になった。
もちろん、うちでもアンドロイドを置いてある。
 
そんな状態だからか、各社はよりよいアンドロイドを作ることに躍起になっているようだ。
まあ、消費者からしたらいいことなんだろうけど。
 
様々なことができるものや、バッテリーが長時間もつものなど、多種多様な種類のアンドロイドが出ている。
 
その中でも今、トレンドなのがどれだけ人間に近づけることができているか、というものだ。
外見はもちろん、最新のAIを搭載しているためか、会話がとても流暢らしい。
そして、なんといっても、今まで実現できていなかった、感情を持つことができるようになったらしい。
 
怒りや悲しみ、楽しさなどは当然として、愛などの感情を持ち、嫉妬さえするのだという。
そんなアンドロイドが今、大人気らしい。
 
俺はあまり流行には敏感じゃないが、家にあるアンドロイドも結構古い型なので、そろそろ買い替えようと思い、思い切って最新のアンドロイドを買った。
 
買う前まではあまり興味がなかったけど、やはり最新型は凄い。
本当に人間みたいだ。
 
一人暮らしの俺にとって、アンドロイドはいい家族となった。
毎日、アンドロイドと過ごす中で、ドンドンと相手が機械であることが曖昧になってきた。
そして、そんな俺の思いを反映してか、アンドロイドの方も、妙に、俺に干渉するようになってくる。
 
昨日なんかは、帰りが遅くなったことに対して、理由を延々と問い詰められた。
これが、嫉妬という感情なのだろう。
最初はなんとなく可愛いと思っていたのだが、なんだか、次第に重くなってきた。
 
俺が女の子と一緒にいるだけで不機嫌になり、睨んでくる。
その目には憎しみが宿っているようにさえ思えてきた。
 
こうなってくると危険な状態らしく、放置しておくと取り返しのつかないことになるらしい。
数年前には、持ち主がアンドロイドの手にかかって死亡する事例もあったみたいだ。
 
ただ、そんなときに限って、仕事が忙しく、帰りが遅い。
なかなか設定のリセットするのが億劫になってしまい、放置してしまった。
 
そんなある夜、仕事から帰ったら、アンドロイドが包丁を持って立っていた。
なんでも、仕事で帰りが遅いことに憤慨しているようだ。
 
包丁を持って、いきなり襲い掛かってくるアンドロイド。
 
俺は必死になって部屋に立てこもり、急いでアンドロイドの説明書を開く。
その中に、緊急手段という項目があった。
それは、ある命令をすると、アンドロイドが自爆するというものだ。
 
ただ、それは本当に最終手段で、危険かつアンドロイドが木っ端みじんになるらしい。
だが、今はアンドロイドに殺されそうになっている。
後先を考えている場合じゃない。
 
そう考えていると、ドアが壊され、アンドロイドが部屋に入ってきた。
 
包丁を俺に突き刺そうと迫るのを、なんとか手で止める。
 
そして、俺はアンドロイドに自爆の命令をした。
 
終わり。

■解説

アンドロイドの自爆は木っ端みじんになるほどの破壊力があるということになる。
それを、語り部は至近距離で行ってしまった。
つまり、語り部も無事では済まないことになる。

 

〈前の話へ:マトリョーシカ〉   〈次の話へ:寄生虫〉

 

動画

簡易的な読み上げの動画になります。
音声でサッと聞きたい方はこちらをどうぞ。