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脱出ゲーム

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■本編

俺は脱出ゲームが好きだ。
脱出ゲームをしているときが、唯一、つまらない現実を忘れられる。
 
だけど、あの感染症のせいで、脱出ゲームの開催が一気に減った。
そのせいで、俺のメンタルはボロボロになっている。
 
だが、ようやく感染症も治まり、徐々に脱出ゲームの開催も多くなってきている気がする。
 
もちろん、俺はこれまで我慢してきた分を取り返すように脱出ゲームに参加した。
 
ただ、なんというか全然物足りない。
 
普通の脱出ゲームでは俺の心は癒されなかった。
 
そんなとき、ネットで密かに話題になっている脱出ゲームがあった。
ネットで話題なのに、言ったという人の書き込みが全然ない。
 
その時点で結構、興味をそそられたが、なにより俺に刺さったのが煽り文句だった。
 
『つまらないリアルから脱出しよう』
 
俺はすぐにこの脱出ゲームに参加した。
 
三人一組で参加するゲームのようで、俺は見知らぬ2人と組むことになった。
この辺はリアル脱出ゲームではあるあるだ。
 
3人で通路を歩いていると、3つのドアがある部屋にたどり着く。
 
部屋の真ん中には小さなテーブルがあり、そこには一枚の紙が置いてあった。
 
『3つの道具の中から一つ選んで、それぞれの部屋に入ってください』
 
そして、その3つの道具というのが、以下のものだ。
 
ロープ。
ナイフ。
ライター。
 
変わった脱出ゲームだ。
三人一組でチームを組んでいるのに、道具を選んだら、一人になる構成になっている。
 
俺は何となくロープを選んで、指定されたドアを開けた。
 
その先はドアや窓もなく、部屋の中央に椅子が一つだけ置いてある部屋だった。
 
どういうことだろうと思い、俺は部屋を見渡す。
そして、天井を見て、俺は納得した。
 
確かに脱出ゲームだ。
 
俺はこの後、見事脱出に成功した。
 
終わり。

■解説

この脱出ゲームの煽り文句は『リアル』からの脱出である。
リアルというのは現実世界のことだった。
つまり、この世界から脱出するということは死を意味する。
 
語り部はロープを選んでいるが、天上を見るとロープを引っかけるフックがあった。
これで語り部は首を吊ったわけである。
ちなみにナイフは手首を切る用で、ライターは練炭に火をつけるための道具だった。

 

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