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あれはまだ僕がフリーターをやってた時の話です。
大学卒業したんですけど、就活が上手くいかなくて、しばらくフリーターをしてたんです。
飽き性というのと、面倒くさがりというのもあって、僕はなるべく楽で給料が高いところを探してました。
もちろん、そんな都合のいい仕事なんてそうそうなくて、夜勤のものが多くて、夜通しなんてものばかりでした。
僕は夜型だったので、夜勤は合ってるって思ったんですよね。
深夜のコンビニのアルバイトとかもやりましたよ。
その中で印象に残っているのは警備の仕事です。
ビルの中を2時間ごとに見て回るって仕事でした。
深夜の真っ暗な中を懐中電灯一本持って、点検していくんです。
友達にこのことを話したら、怖くて絶対に嫌だと言ってましたね。
でも、僕は別に霊感とかないし、そもそも幽霊もあんまり信じてませんでした。
だから、本当に楽な仕事でいいなって思ってたんです。
散歩感覚でビル内を歩いて、それ以外の時は監視カメラをボーっと見るだけの簡単な仕事です。
そのときは、この仕事が転職なんじゃないかって思ってたくらいでしたよ。
一人なのも気楽ですし、怒られることもなくて、本当にいい仕事でした。
あれは5ヶ月くらいしたときのことでした。
見回りが終わって、買っておいたカップ麺を食べながらボーっと監視カメラを眺めていました。
まるで写真のように動かない画面の中で、ふと何か動いたような気がしたんです。
何だろうと思って、その画面をジッと見ていました。
すると、白いものが画面を横切ったんです。
そして、見続けているとまた白いものが写りました。
今度はゆっくりと横切ったので、じっくりと見ることが出来たんです。
それは女の人でした。
白いワンピースを着た、髪の長い女の人です。
侵入者だと思って、僕はすぐにその監視カメラがある階に行きました。
懐中電灯でカメラがあるところを重点に、声掛けしながら女の人を探したんです。
でも、見つけることはできませんでした。
一瞬、警察に連絡しようかと思いましたけど、カメラで見ただけっていうのもあって、もしかしたら見間違いかもしれないって思ったんです。
だから、もう一回、事務所に戻りました。
また監視カメラの画面を見てたら、さっきとは違う階のカメラに、またさっきの女の人が写ったんです。
すると今度は、その女の人はカメラの方をジッと見たんです。
僕は思わず悲鳴を上げてしまいました。
だって、その女の人に目がなかったんです。
目がないというか、抉れているというか、真っ黒な空間というか、とにかく人間じゃないって一発でわかりました。
いくら霊感がなくて、幽霊を信じてない僕でも、はっきりとわかるくらいでした。
その女の人はカメラ越しに僕を見て、にっこりと笑ったんです。
僕は怖くなって、今度は確認に行けませんでした。
もちろん、2時間ごとの見回りも行くことができませんでした。
しかも、その間中、ずーっと女の人はカメラ越しに僕を見て笑っていたんです。
朝が来て、上司の人が出社してきました。
僕は女の人のことを上司の人に話しました。
いつの間にか、女の人は消えていて、上司の人の話では今まで幽霊が出るなんて話は聞いたことないって言うんです。
それで僕はネットとかで、このビルのことを調べてみたんです。
でも別に事故があったとか、人が死んだとかはありませんでした。
それに僕が休みの時に代わりにシフトに入った人に聞いてみても、そんな女の人が出たことなんてないって言うんです。
だからきっと見間違いだったのかもしれないって思って、次の日も出勤しました。
そして深夜2時になると、また同じように女の人が現れて、カメラ越しに僕を見て笑うんです。
さすがにその日でその仕事は辞めました。
誰にも信じてもらえないし、例え信じてもらったところで、女の人が消えるわけじゃありませんし。
辞めてからしばらくは、そのビルのことを誰かSNSで話してないかなって思って見てたんですけど、特に何もありませんでしたね。
あれは一体、なんだったんでしょうかね。
今でも不思議ですが、あまり考えないようにしてます。

