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俺は工場で勤務を続けてもう20年になるベテランだ。
とはいっても、役職についているわけでもない、ただの平社員だから、全然偉くもなんともない。
本当は転職して、この仕事を辞めたいと思っているけど、今更、他の仕事なんてできる気がしない。
それに会社の方だって、未経験の40代後半の人間を雇おうなんて思わないだろう。
もっと早くに手を打つべきだった。
最初はほんの2、3年やるつもりだったのが、あれよあれよという間に、気付いたら20年だ。
そんなこともあり、どんなことがあっても辞めないし、辞めれない。
きっと、俺がこの工場を辞めるのは定年か死ぬときぐらいだろう。
これが、今まで何もしてこなかった自分に対してのツケなんだと思う。
うちの工場は別段ブラックというわけではない。
人間関係も良好だ。
だから、正直に言うとここの工場は居心地がいい。
だからこそ、20年もズルズルと働くことになっているんだが。
そんな、うちの工場だが、2つほど変わったところがある。
1つは死人が多いということ。
工場内の事故もあるけど、病死、事故死、自殺、不審死が定期的に発生する。
大体、2年に1回くらいだ。
そして、もう1つ変わったところがあるのは、人員が補充されることだ。
欠員が出たなら補充されるのは当然の話だろう。
俺だってそう思う。
欠員が出たのに補充しない方が逆に問題になる。
でも、変わっているのはそのタイミングだ。
補充は欠員が出る一週間くらい『前』にされる。
つまり誰かが死ぬ前に補充されるのだ。
それはただの偶然だと思うだろうか?
そりゃ、1、2回だったら俺だって偶然だろうと思う。
けれど、10回連続だったら、さすがに偶然とは思えないんじゃないだろうか?
しかも、補充は必ず欠員が出るときしかされない。
それ以外には絶対に人は入ってこないのだ。
もちろん、工場長にそれとなく、この件を聞いてみたことがある。
でも、それは工場長もわからないらしく、突然、本部から新しい人が派遣されてくるのだという。
このことに気付いているのは、工場内に俺と工場長を含めて、10人もいないと思う。
こんなことを新人に話す必要もないし、気味悪がられて辞められても意味がない。
そして、なんで10人くらいしかいないのがわかるかというと、補充された後、明らかに集中力が上がっている人間がそのくらいいるからだ。
当然、俺も、補充があった瞬間から一切気を抜かない。
極力、外出もしないし、食べる物も買い置きした、カップ麺で過ごす。
以前、食中毒で死んだやつがいたからだ。
さらに睡眠にも気を付けている。
寝不足なんか一番危ない。
それでなくても一日中気を張っているのだから、精神的な疲労が蓄積している。
だから暇さえあれば昼寝をするし、風邪をひかないように、面倒でも毛布をかぶるようにする。
とにかく、一週間しのげればいいのだから。
そして、ついに昨日、新しい補充要員が来た。
タイミング的に、今年だろうとは思っていたけど、思ったより早かった。
さて、これからあと6日間、神経をすり減らしながら、細心の注意を払って仕事と生活をしていかなければならない。
これが段々とキツくなってきた。
たぶん、年のせいなのだろうけど、時々、集中力が切れることがあるのだ。
その都度、自分に活を入れ、集中する。
大丈夫、あと5日だ、と自分に言い聞かせながら。
そんなことを繰り返していくうちに、1日が過ぎていき、気付けば人員補充がされてから6日が経っている。
今日で7日目だ。
つまり、今日、誰かが死ぬ。
考えるだけで手が震えてくる。
俺は作業をしながら必死に祈る。
頼む、早く誰か死んでくれ。

