本編
私は念願の医者になることができた。
父親が開業医をやっているということで、私が医者になることにとても期待されていた。
私は性格的にケアレスミスが多く、テストなんかでもとても苦労した。
しかし、両親の期待を裏切るわけにはいかなかったので、人よりも努力することでなんとか医者になることができたのだ。
周りからは内科を進められたが、外科医になる夢は捨てられなかった。
最初は絶望的に下手だった手術も、努力でなんとか普通の外科医並みの技術を習得することができた。
そろそろ父の病院を継げる頃だと思った時だった。
私がした手術でミスが見つかった。
なんと患者の体内にメスを置き忘れたのだ。
慌ててすぐに摘出手術を行う。
慎重にメスを探し当て取り除く。
そして縫合して手術を終える。
最後に念のため、確認を行う。
よし。
メスは手術前と同じ数ある。
私はホッと胸を撫でおろした。
終わり。
■解説
語り部が行った手術は、患者の体内に置き忘れたメスの摘出手術である。
ならば、メスの数は1つ多くなくてはならない。
つまり語り部はまた新しいメスを患者の体内に置き忘れたことになる。