本編
俺は彼女を愛している。
一緒に出掛ける時は、手を繋いで歩く。
もちろん、恋人繋ぎだ。
俺は手を繋ぐことが好きなので、ずっと繋いでいたい。
でも、彼女は恥ずかしがって、人がたくさんいるところでは手を放してしまう。
それがちょっと残念だ。
別に恥ずかしがることなんてないのに。
そんなあるとき、彼女は事故で左腕を失ってしまった。
だから今では、俺は右手で彼女と手を繋いで歩いている。
もちろん、恋人繋ぎだ。
これからはずっと、好きなだけ、彼女と手を繋ぐことができる。
彼女には悪いが、正直、事故にあってくれてよかったなんて思っている。
絶対に、そんなことは彼女には言えないけど。
終わり。
■解説
語り部が右手で手を繋ぐということは、彼女は左手で繋ぐはずである。
しかし、彼女は事故で左腕を失っている。
さらに、語り部は「ずっと、好きなだけ繋げる」「事故にあってくれてよかった」と言っている。
つまり、語り部は彼女の左手を回収し、その手で恋人繋ぎをしている。