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意味が分かると怖い話 解説付き Part691~700

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架空請求

ある男の家に、ある請求書が届く。
その内容は、殺人依頼サイトからの利用料に関してであった。
 
男は笑いながら「架空請求だ」と家族に言って、請求書を捨てる。
確かに男の周りでは誰も死人が出ていない。
 
数ヶ月後。
その請求書を送ってきた人間が逮捕される。
 
そして、その数週間後に男が逮捕された。
 
終わり。

■解説

求書を送ってきた人間は架空請求で捕まったわけではない。
つまり、男は本当に殺人依頼を利用したため、捕まってしまったのである。

 

やらせ

最近、巷では若い女性の殺人事件が続いている。
 
殺害された女性たちの共通点は、単に若いだけであり、容姿や血液型、出身地などはみんなバラバラだった。
そのせいか、警察は犯人の特定ができず、通り魔的な犯行だと断定する。
 
犯人の目撃情報もなく、手掛かりも全く残していない。
わかっているのは、犯人は女性の首を一突きして殺害しているという、殺害方法だけだ。
 
さらに、女性たちを襲う場所も日にちも規則性がなく、多くの警察官で町を巡回するしか方法はなかった。
それでも、犯人は大胆にも犯行を行っていく。

町の住人たちは怯え、何もできない警察に批判が集まる。
 
そんなとき、あるテレビ局が、自分たちで犯人の情報をつかめば視聴率が取れるのではないかと考え、若いキャスターを囮にして犯人をおびき寄せようとする。
 
しかし、その考えが犯人にもバレているのか、一向に犯人が現れない。
 
無意味に日数だけが過ぎていく。
 
そこでそのテレビ局は「やらせ」をしようと考える。
包丁を持った偽の犯人を用意して、キャスターを襲わせ、逃げるところを映像に収めるというものだ。
 
犯人役や囮役のキャスターと念入りに打ち合わせをして、本番に臨む。
決して犯人の手掛かりになるようなものも、行動も一切残さないようにと念入りに準備をしたのだ。
 
そして、キャスターが誰もいないような暗がりを一人歩く。
 
すると目の前からアイスピックを持った、覆面をした男が現れる。
囮役のキャスターは悲鳴を上げ、逃げていく。
 
その様子をばっちりとカメラに収めるテレビスタッフ。
 
それから数週間後。
テレビ映像により、犯人は無事に逮捕されたが、テレビ局には多くの非難の声が寄せられた。
 
終わり。

■解説

偽の犯人は包丁を持って、キャスターを襲うと打ち合わせをしていた。
しかし、現れた覆面の男が持っていたのはアイスピックである。
つまり、キャスターを襲ったのは偽物ではなく、本物の犯人だった。
そのため、その映像で犯人を特定することができた。
ただ、そのことでテレビ局には非難の声が殺到している。
それは、本物の犯人によって、キャスターが殺されてしまったからである。

 

引っ越し

今月末に引っ越しすることになった。
今年でもう4回目だ。
 
いい加減、引っ越しするのも疲れる。
引っ越しにもお金がかかるし、荷造りとかの手間だってかかる。
できれば引っ越しなんてしたくない。
 
けど、まあ、仕方がない。
彼女のことが何よりも優先なのだから。
 
それにしてもストーカーってやつはなんとかならないんだろうか。
ストーカーが出るから、彼女は引っ越しをしなければならない。
何かあってからじゃ遅いから、引っ越したほうがいいのはわかる。
 
今度は俺がストーカーを捕まえて見せる。
そうすれば、彼女は引っ越す必要はなくなるんだから。
 
さてと。
俺もそろそろ場所を決めないと。
彼女の引っ越し場所は調べてある。
近くの物件が空いていればいいんだけど。
 
終わり。

■解説

語り部が『彼女』のストーカー。
しかも、語り部は自分がストーカーになっていることに気づいていない。

 

トイレの落書き

俺は別に高い志があったわけじゃない。
何気なくSNSで書いたことが大バズりして、一躍、時の人になってしまった。
それから俺は周りから、なんだかすごい人だと思われるようになった。
 
お調子者の俺はそれに応えてしまった。
 
あれよあれよという間に、知事に立候補することになり、テレビでも取り上げられるようになった。
そうなってくると、アンチが湧いてくるようになる。
過去の俺の発言が掘り起こされ、「やっぱりあいつはやばい奴だ」というレッテルを貼られてしまう。
 
そうなってからは、落ちるのは早かった。
もちろん、俺は落選し、結果が出てからも俺は世間から叩かれ続けた。
 
もう疲れた。
とにかく、俺は一人になりたかった。
 
山奥にでも逃げ込めば、少しはメンタルが回復するかと思い、なにげなく山に登った。
登っている最中に、休憩所のような小屋を見つける。
 
ちょうど疲れてきたと思っていたところだ。
休憩させてもらおう。
 
俺はふらふらと小屋の方へ向かい、ドアを開けようとする。
だが、木で出来ている小屋は、ドアが膨張しているせいか、なかなか開かない。
なんとか体当たりをして、無理やり開けたが、そのせいでドアが壊れてしまった。
 
まあ、誰も使っていなさそうな小屋だから問題はないだろう。
 
中に入ってみると、荒れ放題だった。
埃が積もっている。
それを踏んだ形跡もない。
これはもう2年以上は誰も入っていなかったのだろう。
 
こんなところじゃ、休憩するどころか、かえって気が滅入ってしまう。
さっさと出よう。
 
そう思ったが、トイレに行きたくなったので、トイレだけ使ってから出ることにした。
 
トイレもやっぱり、酷い状態だった。
一瞬、外のほうがマシかと思ったが、小の方だったので、我慢することにした。
これで、大の方で便座に座らなければならないなら、外でしたと思う。
 
用を足していると、壁に物凄い量の落書きがあることに気づいた。
下品な言葉や、誰が誰のことを好きなんていうくだらないこと、電話番号やメールアドレスなんかも書いてある。
 
その中に、俺の名前と、「知事落選おめでとう。お前なんかが知事になれるわけないだろ」という落書きを見つけた。
 
はあ。
こんなところにまで、俺の悪口が書かれている。
ネットの世界から出てもこれだ。
もう、逃げ場なんかないんだろうか。
 
俺はトイレから出て、山を下り始めた。
今度は海にでも行ってみるか。
 
終わり。

■解説

この小屋には2年以上、人が入った形跡はないはずである。
ではなぜ、語り部が知事に落選したことが書いてあったのか。
この落書きを書いた人間は未来人なのかもしれない。

 

奇病の特効薬

男は今まで発見されていなかった、新種の奇病にかかってしまった。
新種のため、もちろん、治療法も見つかっていない。
 
男はただ、死を待つだけだった。
 
だが、男が絶望する中、病院に未来からタイムマシンが到着した。
そのタイムマシンには誰も乗っていなく、一通の手紙だけが入っていた。
 
その手紙の内容は、未来では男がかかった奇病が蔓延していて、多くの死者が出ているとのことだった。
しかし、今、ようやくその奇病の特効薬が完成する目途がたったらしい。
 
そこで、世界で初めて奇病にかかった男に、未来まで来ないかという誘いのためにタイムマシンを送ってきたらしい。
しかも、そのタイムマシンは貴重なものでこのタイミングを逃せば、もう未来に来るすべはないとのことだ。
 
男は喜んだ。
さっそく、タイムマシンに乗り込み、未来へと向かった。
 
無事に未来にたどり着いた男は、研究者によって色々と実験される。
そして、その数日後。
奇病の特効薬が完成した。
 
しかし、男はその特効薬を使うことはなく、死んでしまった。
男は未来に来たことを後悔して、死んでいったのだという。
 
終わり。

■解説

なぜ、特効薬が完成したのに、男は使うことなく死んでしまったのか。
それは、「特効薬ができる前」に男が死んでしまったからである。
そして、なぜ、男は後悔したのか。
理由は「男を実験したことで」特効薬が完成したからである。
つまり、未来人は特効薬を完成させるために男を呼んだのであって、治す気はなかった。

 

歯医者

男の家の近くに歯科医院ができた。
そこはかなり人気があり、評判もすごくいい。
 
男は今まで歯科医院にほとんど行かないタイプだったが、噂を聞いて行ってみようと考えた。
 
その歯科医院で見てもらった男は、虫歯一つなく、健康な歯だと診断された。
 
男はがっかりした。
 
終わり。

■解説

歯科医院の評判が良かったのは美人の女医がいたからである。
人気があったのは男性からだった。
男は健康な歯だったので、歯科医院に通うことができず、がっかりしたというわけである。

 

自転車

自転車は本当に便利だ。
歩きよりも早いし、車道も歩道も通れる。
 
歩道が混んでいれば車道を走ればいいし、車道が混んでいれば歩道を走ればいい。
 
信号だってそうだ。
交差点なんて、本当に便利だ。
車と違って、青になった方をすぐに渡れる。
 
今も横で車が止まっている中、俺は信号を突っ切っていく。
悔しいのか、車がクラクションを鳴らすが関係ない。
 
本当に自転車は便利だ。
 
終わり。

■解説

横で車が止まっているのに、真っすぐ進むということは、信号は赤なはずである。
そして、クラクションが鳴らされているということは車が迫っている。
語り部はこの後、車に轢かれる可能性が高い。

 

シャッター

俺の両親は駄菓子店を営んでいる。
といっても、家と繋がっていて、道楽でやっているような店だ。
 
久しぶりに夏休が取れたので実家に帰ってみる。
すると、珍しいことに店はシャッターが閉まっていて、中から鍵がかかっていた。
 
仕方ないから裏口の玄関から合鍵を使って中に入る。
すると、物凄い異臭が漂っている。
窓を閉め切っているせいか、本当にヤバい。
 
何の臭いか探していると、居間に両親の死体があった。
ナイフで滅多刺しされている。
 
俺は警察に電話をかけようと、スマホに手を伸ばした。
 
終わり。

■解説

シャッターと玄関のドアが内側から閉まっていて、さらに窓も締め切っている状態と語り部は言っている。
つまり、両親を刺した犯人はまだ家にいるということになる。
この後、語り部は犯人に襲われる可能性が高い。

 

肩たたき券

息子が5歳のころ、私へのプレゼントとして肩たたき券をもらった。
そのときはなんだか嬉しくて、使うのが勿体なくて、机の奥にしまっていた。
 
あれから10年以上経った今、息子のほうが、肩が凝ったと言ったのを聞いて、肩たたき券のことを思い出した。
机の奥を探したら、まだ残っていた。
 
息子に「この券、まだ有効?」って聞いたら、有効だって言われた。
 
じゃあ、使おうと思って券を息子に渡した。
 
息子はニヤリと笑って、私は券を使って後悔した。
 
終わり。

■解説

息子がたたく方とは書いていなかった。
つまり、息子の方がたたいてもらう方だったので、語り部は後悔したのである。

 

ミイラ男

ここは妖怪がやってくる、妖怪専用の病院。
毎日、様々な妖怪が担ぎ込まれてくる。
 
座敷童、河童、雪女、猫又や海坊主も連れ込まれる。
 
今、私が担当しているのはミイラ男。
なんでも、火事に巻き込まれて全身火傷をしたみたいだった。
 
予断を許さない状況だったけど、明日は妹の結婚式。
 
私は後輩に引継ぎして、有給休暇を取った。
 
次の日。
担当した患者のベッドには大量の包帯が置いてあった。
 
後輩の話ではもう使わなくなったから、あとで処分するんだそうだ。
 
そっか。
無事に退院したんだ。
 
よかったよかった。
 
終わり。

■解説

ミイラ男が包帯を使わなくなったというのはおかしい。
つまり、ミイラ男は退院したのではなく、亡くなってしまい、もう使わなくなったということである。

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