本編
俺は数年前から不眠症だ。
最初は少し寝付くのに時間がかかるかなと思うくらいだったが、段々と眠るまでの時間が長くなり、最近では起きる時間の1時間前に寝られればいいくらいになっている。
さらに、ここ数日は全く寝られていない。
徹夜しっぱなしなのに、全く寝られないのだ。
さすがにヤバいと思い、俺は会社を休んで病院に行った。
よくわからない病名を言われ、睡眠薬を処方された。
それも、かなり強いやつらしい。
とにかく、寝られるだけ寝なさいと医者に言われた。
仕事がひと段落していたことと、有給が溜まっていたこともあり、俺は思い切って3日間の休みを取ることにした。
3日間丸々寝るため、事前にやることを終わらせて、燃えるゴミも収集所に出しておいた。
飯もたらふく食べ、夜の12時に睡眠薬を飲む。
もし、3日以上寝てしまったらどうしようなんて考えながら、布団に入った。
すると、今までのことが嘘のように俺はすぐに眠りに付けた。
どのくらい寝たのだろうか。
俺はハッとして、起き上がった。
どのくらい寝たのだろうか。
感覚では2日くらいはずっと寝てたんじゃないかという気がする。
時計を見てみると、深夜の1時だ。
やっぱり2日くらい寝られたんだろう。
そうだ。
2日経っていると言うことは、今日は燃えないゴミの日のはず。
どうせ起きれたんだから、出しておこう。
俺は燃えないゴミをまとめて袋に入れ、収集所へ持って行く。
するとゴミ収集所にはゴミ袋が一つだけあった。
それは俺が2日前に出した燃えるゴミをまとめた袋だった。
終わり。
■解説
語り部が出した燃えるゴミが残っていたのはなぜだろうか。
分別ができていなくて回収されなかったとも考えられるが、その場合、収集できない旨の紙が貼られるはずである。
それがないということは、「まだ回収されていない」可能性が高い。
つまり、語り部が燃えるごみを出してから、1日も経っていないということである。
語り部は強い睡眠薬を飲んだにもかかわらず、1時間しか寝られていないということになる。
動画
簡易的な読み上げの動画になります。
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