サイトアイコン 意味が分かると怖い話【解説付き】

意味が分かると怖い話 解説付き Part611~620

〈意味が分かると怖い話一覧へ〉

〈Part601~610へ〉   〈Part621~630へ〉

瞬間接着剤

「よお。そんなに急いでどこに行くんだ?」
「あ、Tくん。ちょっと、針と糸を買いに行こうと思って」
「なんだ? 裁縫でもする気か?」
「ははは。そんなとこ」
「また、変わった趣味を始めたな」
「またってどういうことさ」
「お前、この前まで、昆虫採集が趣味だったじゃねーか」
「採集じゃないよ。解体だから」
「いや、もっと変だから」
「それより、Tくんって、去年手術したんだよね?」
「ああ。退院するのに3ヶ月かかったな」
「やっぱり、痛かった?」
「いや、麻酔するだろ。腹を開けるんだからさ」
「そりゃそっか」
「全身麻酔だから、寝て起きたら終わってたよ」
「手術が終わったら、腹を縫うんだよね?」
「ああ。俺の時も縫ってな」
「その糸、見せてくれない?」
「あのなぁ。去年の話だぞ。もうとっくに抜糸してるっつーの」
「そっか。そうだよね」
「そういえば、戦場とかだと糸で縫うんじゃなくて、瞬間接着剤を使うらしいな」
「えー、うそだぁ」
「ははは。まあ、都市伝説だろうな。けど、そういう処置の仕方はあるって聞いたことがあるぞ」
「ホントに?」
「いや、知らんけど」
「無責任だなぁ……。おっと、そろそろ行くね。接着剤買わないと」
「ああ。気を付けてな」
 
終わり。

■解説

最初、買い物は針と糸だと言っている。
だが、傷口を接着剤でくっつける話を聞いてからは、買い物の内容が接着剤になっている。
趣味が昆虫の解体だったことからも、もしかすると人間を解体しようとして刺してしまい、その傷をくっつけようとしているのかもしれない。

 

性病

最近、性の乱れが問題視されている。
しかも、低年齢化も問題となっている。
 
そんな中、ある高校で一斉に性病の検査が行われた。
すると複数の生徒が性病にかかっていることがわかる。
 
だが、その中に1人だけ不思議な生徒がいた。
その生徒は今まで恋人ができたこともなく、恋人との性交をしたことがなかった。
 
終わり。

■解説

その生徒はパパ活をしていて、そこから感染した。

  

メダカ

最近、僕は魚にハマっている。
食べることじゃなく、飼う方だ。
 
誕生日プレゼントで水槽も買ってもらった。
本当は熱帯魚を飼いたかったけど、お母さんがまだ早いって言って、買ってくれなかった。
 
でも買ってくれなかったのは、熱帯魚用の水槽は高いからだと思う。
 
しょうがないから金魚を飼うことにした。
お祭りの金魚すくいで取ったやつだ。
 
でも、たった2匹しか取れなかった。
結構、大きい水槽なのに金魚2匹しかいない。
なんだか寂しい。
 
だから僕は近くの小川に行ってメダカを取ることにした。
網を持って、川をさらったんだけど、そこでもあんまり取れなかった。
 
取れたのは全部で小さいのが4匹。
 
それでもいないよりはいい。
僕はさっそく、持って帰って水槽に入れた。
 
金魚2匹とメダカ4匹。
 
まだ水槽には空きスペースが多いけど、まあ、いいや。
今度はなんか違う魚を取ってこよう。
 
次の日。
友達のカンちゃんが家に遊びに来た。
せっかくだから、カンちゃんに僕の水槽を見せて自慢した。
 
そしたらカンちゃんは慌ててこう言った。
 
「ダメだよ。メダカと金魚を一緒に飼ったら」
「え? なんで?」
「金魚は小さいメダカを食べちゃうんだよ」
 
僕は慌ててメダカを取り出した。
仕方ないから虫かごに水を入れて、その中に入れる。
 
「カンちゃん、メダカ、どうしよう?」
「川に放してくるしかないんじゃないか?」
「えー、でも、せっかくとったのに」
 
そのときだった。
メダカが急にメダカの赤ちゃんを産んだ。
可愛いメダカの赤ちゃんがぎこちなく泳いでいる。
 
このまま川に流したら死んじゃうんじゃないだろうか。
そこで、僕はもう少し大きくなるまで虫かごの中でメダカを飼うことにした。
 
終わり。

■解説

メダカは卵を産むはずである。
しかし、稚魚を生んでいる。
このことから、これはメダカではなく、メダカによく似た「カダヤシ」だと思われる。
そして、カダヤシは特定外来生物に指定され所持や運搬、放流等が禁止されている。
メダカと間違えて飼育してしまうと罪に問われてしまう。
見つかってしまえば、両親が罰金を払うことになるはずである。
そうなると、語り部は二度と魚を飼うことを禁止されてしまうだろう。

 

母の手紙

俺のお母さんは俺が5歳の頃に病気で死んでしまった。
そのせいか、俺はお母さんの記憶がほとんどない。
 
でも、お母さんはそんな俺に対して手紙を残してくれた。
15年分の手紙を書いて、タイムカプセル郵便として預けているのだという。
毎年、俺の誕生日にお母さんが書いていた手紙が届く。
 
「7歳の誕生日と小学校入学おめでとう。友達はたくさんできたかな?」
「13歳の誕生日と中学校入学おめでとう。中学生になったんだから、これからはちゃんとお父さんの手伝いもやってね」
 
まるで見透かされたかのような手紙の内容。
俺はお母さんのことはあんまり覚えていないけど、お母さんは俺のことをしっかり見てたんだなって思う。
 
この手紙のおかげで俺は寂しい気持ちもいくぶんは薄れている。
まるでお母さんが近くに入れるような、そんな気がするのだ。
お母さんはズボラな俺を注意し、応援してくれる。
高校入学の時なんか、こんな手紙の内容だった。
 
「お誕生日おめでとう。高校は第一志望は落ちちゃっても気にしないで。入った高校でしっかり頑張ればいいんだからね」
 
いや、参った。
まさか、第一志望の高校を落ちることすら予見されてたとは。
高校受験の時は少し油断したというのがあった。
いわゆる勉強不足。
落ちてしまうのもしょうがない。
でもお母さんの言う通り、ここは腐らずに頑張ろう。
 
俺は心を入れ替え高校では、自分でもよくやったと思えるほど頑張った。
そのおかげで、無事に大学にも入学できたのだ。
 
「大学入学と成人おめでとう。お母さんのいうことを少しはきいてくれたのかな?」
 
本当にお母さんには感謝している。
この手紙がなければ、俺はとっくの昔に、堕落した人間になっていただろう。
 
しかし、そんな手紙も、俺が成人する20歳で終わってしまう。
それが凄く寂しい。
 
「20歳の誕生日おめでとう。もう立派な大人だね。これからはもうお母さんが注意しなくても大丈夫。でもね、これだけは忘れないで。手紙は今年で終わりだけど、これからもずっとお母さんはあなたのことを見てるからね」
 
涙が止まらなかった。
本当はもっともっと手紙が欲しかった。
でも、いつまでもそんなんじゃ天国のお母さんに心配をかけてしまう。
 
お母さんの言う通り、俺はもう大人だ。
お母さんを心配させないように、これからもしっかり生きていこうと心に誓った。
 
終わり。

■解説

母親が亡くなったのは、20年前。
それなのに、18歳のときの手紙には「成人おめでとう」と書いてある。
母親が亡くなった際には20歳が成人のはずである。
この母親は何か未来予知のような力があったのかもしれない。

 

洗濯物

私は大学進学を機に晴れて一人暮らしをすることになった。
それまではずーっと、家で両親の厳しい目の中、生活していた。
門限は6時で、周りの子たちはまだ遊んでいるのに、一人帰らないといけない寂しさ。
もちろん、友達だけの旅行も許して貰えなかった。
そんな煩わしさから、ようやく解放されたのだ。
 
とはいえ、やっぱり女の子の一人暮らしに多少は不安になる。
しかも、この辺には変出者が多いらしい。
近所を歩いていると、よく「変出者注意」という看板を見る。
本当に怖い。
 
だから、私はベタだけど、洗濯物を干すときには男物も一緒に干すようにした。
極力、女の子一人で住んでいないと思わせるような工夫をする。
 
本当は早く彼氏を作ればいいんだけど、そうそう上手くはいかない。
サークルに入ったり、合コンに行かないと。
 
そんなあるとき、なんと下着が盗まれてしまった。
ベランダに干してたところを狙われたようだ。
 
くそぉ。2階だからって油断した。
 
とにかく、警察に連絡しないと。
こういうときはすぐに動かないと、相手を増長させてしまう。
盗んでも大丈夫だと思われたりしたら、大変だ。
 
警察官が来てくれて、私は事情を話した。
すると警察官は笑って、「あなたは大丈夫ですよ」だって。
なにさそれ。
こっちは被害出てるんだけど。
 
警察官は一応見回りはしてくれると言ってた。
そして、「下着は干さない方がいいかもね」だってさ。
 
いやいや。
部屋干ししろっての?
私、部屋干しは生乾きになるから嫌なんだよね。
外に干さないなんてあり得ない。
 
それにしても、盗まれた分は補充しないと。
面倒くさいけど、買いに行くか。
うーん。
まだ買うのに抵抗があるんだよなぁ。
 
でも、仕方ないか。
防犯のためだもんね。
 
終わり。

■解説

下着を買うのに抵抗があるというのが、少し変である。
つまり、下着泥棒に盗まれたのは、男物の下着。
なので、警察官は女性である語り部に大丈夫と言っている。

 

情報提供者

最近、近所で殺人が続いている。
狙われる人間は老若男女バラバラで、おそらく恨みや怨恨ではなく、規則性なく襲っているのだろうと予測できる。
 
また、犯人は人通りが少ない場所かつ監視カメラに写らない場所で犯行に及んでいる。
かなり徹底していて、被害者から指紋はもちろん、犯人の手がかりになるようなものが全く残っていない。
犯人に狙われて生き残った人はいないし、目撃情報もない。
周りの状況だけではなく、狙ったターゲットの行動もある程度調べた上での犯行のようにも思える。
 
そのため、捜査は全くと言っていいほど進んでいない。
多くの警察官を動員して見回りをしているが、それをあざ笑うかのように、手薄なところを狙われる。
 
そのせいで、今は警察が市民から非難されている。
 
悪いのは犯人なのに、捕まえる側が非難されると言うのもなんだか変な感じがするのだが。
 
捜査が行き詰まり、警察全体の士気が落ちている中、ある情報が入って来る。
それは、なんと殺害現場を見たという目撃者が出てきたのだ。
 
物陰に隠れていたおかげで犯人に見つからずに済んだのだと言う。
そして、その目撃者はかなり詳細なところまで覚えていた。
犯人の性別、年齢、顔、背格好、凶器はもちろん、どんな風に殺害したかも語ってくれた。
映画帰りの女性を後ろから口をふさぎ、アイスピックで一刺ししたのだという。
返り血も極力浴びないようにしていることから、かなり手慣れているようだ。
 
だが、この目撃者のおかげでモンタージュも作れた。
これで犯人逮捕も近いだろう。
 
終わり。

■解説

目撃者は殺害現場を見ていたはずである。
では、なぜ、被害者が「映画帰り」だとわかったのだろうか。
目撃者ではなく、犯人の可能性が高い。
そのためモンタージュもデタラメということになる。

 

お手伝い

その子供は母子家庭だったこともあり、小さいながらも母親の手伝いをしていた。
5歳でありながら掃除、洗濯、買い物やちょっとした料理なんかもできる。
そんな子供を母親はもちろん、周りの人たちも良い子だと褒めている。
 
母親の笑顔や、褒められることが嬉しくて、その子供はさらに色々な家事をやるようになった。
今では母親がついていなくても、なんでも一人で出来てしまうほどだ。
 
そんなあるとき、母親は朝寝坊をしてしまった。
ボサボサの髪を鏡で見ながら、ため息を付く。
 
「今日はヘアアイロンしてる時間ないかな?」
 
するとそこに子供がやってくる。
 
「ヘアアイロンってなに?」
「髪にアイロンをかけることだよ」
 
子供は母親の言葉を聞き、「ちょうどよかった」と言って部屋に走っていった。
そして、数分後、子供はお手伝いをした。
 
終わり。

■解説

子供は普通のアイロンを持って、母親の頭に押し当てた。
母親はこの後、頭を大火傷することになる。

 

ぬか漬け

「俺、最近、ぬか漬けにハマってるんだよね」
「へー。渋いな」
「俺もさ、最初は年寄り臭いって思ってたんだけどさ、食べてみたら美味しくて」
「うーん。ぬか漬けかぁ」
「しかもさ、作るのも楽しいんだよ」
「え? 作ってるの?」
「ああ。ばあちゃんにさ、ぬか床わけてもらって、色々漬けてるんだよ。なにを漬けるか試すのも楽しくてさ」
「ぬか漬けってキュウリとか白菜とかだけじゃないのか?」
「それがさ、結構、色々漬けられるんだよ。あ、そうそう。肉とかも漬けられるんだぞ」
「マジで? 美味いのか?」
「それがすっごい美味い。あれは癖になるな」
「いいなぁ。俺も食いたい」
「食いに来るか? 一緒に白菜も漬けてるんだ。これが凄い合うんだよ」
「いいのか? 行く行く」
「じゃあ、今日の帰りにうちによって行けよ」
「わかった」
 
終わり。

■解説

肉などの生ものを漬けると様々な雑菌を含むため、ぬか床が使い回せなくなるので、漬けたあとのぬか床は廃棄しなければならない。
しかし、そのまま使い続けている。
2人はこのあと、食中毒になる可能性が高い。

 

鏡の世界

ちょっと、お前らに聞きたいことがある。
というより、相談に近いかな。
もしかしたら、釣りと思われるかもしれないけど、聞いて欲しい。
 
まあ、信じられないやつは釣りだと思ってくれていい。
 
 
俺は中学の頃、イジメにあっていた。
だから、不登校だった。
 
けど、俺は学校に行っていない間も家で必死に勉強をしていた。
そのおかげで、何とか俺を拾ってくれた高校があったんだ。
 
それを機会に俺は学校に通えるようになったんだよね。
ただ、やっぱり俺は人と話すのが不得意というか人見知りというか、とにかく友達ができなかったんだ。
イジメられるよりかはマシだったけど、せっかく学校に行っているんだから、楽しい高校生活を過ごしたいと考えていた。
 
友達を作ろうと思い、クラスメイトに話しかけようとするが、どうしてもその一歩が踏み出せない。
そうこうしているうちに、入学から2ヶ月が経った。
もちろん、友達は一人もできなかった。
というより、クラスの中で俺は浮いた状態になっていた。
 
このままではまたイジメられる。
 
そう予感していた。
中学のときも確か、こんな流れだった気がする。
友達がいないということは、誰も味方がいない状態だ。
だから、みんな、安心して俺をイジメることができたんだろう。
 
なんとなくだけど、クラスの雰囲気が俺を異物と見ているような感覚がする。
 
ヤバい。
このままじゃ、中学の時と同じになってしまう。
それだけは嫌だ。
 
そう思って、俺はとりあえずの対策として、笑顔を絶やさないようにすることにした。
毎朝、鏡に向かって笑顔の練習をする。
不自然な笑顔にならないように、自然に笑えるように練習したんだ。
 
そのおかげかどうかはわからないが、俺は一人だけど、Sくんという友達を作ることに成功した。
 
というより、Sくんから声をかけてくれたのだ。
 
いつも一人でいた俺を放っておけなかったらしい。
 
まあ、理由はどうでもよかった。
友達ができたことが本当に嬉しかった。
もしかしたら、俺にとって、Sくんは初めての友達だったかもしれない。
 
その友達をきっかけにドンドンと友達が増えていった……なんてことはなかったけど。
でも、俺はSくんがいればそれでよかった。
Sくんに嫌われないように、笑顔の練習だって、毎日続けていたんだ。
 
学校の登下校はもちろん、昼休みや放課後もSくんと一緒にいることが当たり前になっていた。
中学の頃からは考えられないほど、学校が楽しかった。
これも全部、Sくんのおかげだ。
 
だけど、1つだけ気になっていることがある。
 
それはSくんがかなり情緒不安定なところだ。
凄く優しいときもあれば、凄く乱暴なときがある。
 
それは別にいい。
なぜなら、中学でイジメれらていたときのことを考えれば、全然、大したことはない。
俺に手を上げるときもイジメじゃなく、怒りによるものだからだ。
悪意があるかないか。
やられることが同じでも、そこには大きな違いがある。
 
だけど、困っているのはSくんが怒ることじゃなく、なんで怒るかの『きっかけ』がわからないところだ。
人って、大体は怒る理由というのは同じなはずじゃないか?
つまり、どこを踏めばその人にとっての地雷か、というのは付き合っていけばわかってくるはずだ。
 
なのにSくんの場合は全くわからない。
同じことをしても、笑って許してくれるときもあれば、いきなり叩いてくるときもある。
なにがSくんの切れるきっかけなのかが、不明なのだ。
これじゃ、気を付けようがない。
 
でも、だからと言ってSくんと距離を置いたりしたくはない。
だって、初めての友達なのだから。
 
だから、俺は必死になってSくんを観察した。
どんな細かいことでも見落とさないように、Sくんを見続けた。
 
そうしているうちに、俺はあることに気付いたんだ。
Sくんの利き手が、日によって違うときがあるってことに。
 
そんな不思議なことがあるだろうか?
ただ、もしかするとSくんは両手が利き手なのかもしれない。
 
さらに、観察を続けると利き手と性格の共通点も見つけることができた。
 
それは右利きのときのSくんは優しく、左利きのときのSくんは乱暴者だということだ。
しかも、Sくんの記憶に違いがあることがわかった。
 
右利きのときのSくんと過ごしたときの記憶が、左利きのときのSくんとズレがあることだ。
 
例えば、右利きのときのSくんと学校帰りにアイスを食べたのに、左利きのときのSくんとその日の話をすると、学校帰りに食べたのはハンバーガーということになっている。
 
それを総合的に考えて、俺はある答えに辿り着いた。
 
それは――Sくんが二重人格じゃないかってことだ。
そう考えれば、色々と辻褄が合う。
 
どうだろうか?
 
一応、先生には、Sくんに内緒で相談してみた。
だけど、何をバカなことを言ってるんだって顔をされた。
俺の気のせいじゃないかって言われたんだ。
 
先生の話ではSくんの性格がコロコロ変わるなんてことはないって言うんだよ。
 
まあ、性格が変わったことに気付くほど、先生がSくんと話してないからだと思うけど。
 
こういうときって、精神科の病院に行くと人格を統合させることができるっていうのがあるらしい。
 
けど、それをやんわりとSくんに言ったら、激怒されたんだ。
俺は二重人格なんかじゃないって。
 
それからはSくんとギクシャクしちゃってさ。
1ヶ月くらい、まともに話してくれなくなっちゃったんだよ。
 
で、俺が相談したいのは、どうやって謝ったらいいかってことだ。
仲直りの方法を相談したい。
 
本当は右利きのSくんのときに仲直りをしたいと思ってるんだけど、この1ヶ月間くらい、Sくんはずっと左利きなんだよ。
 
なにか、いい仲直り方法を知っていたら教えて欲しい。
 
 
あとさ。
これはどうでもいい話なんだけど、いつから日本って左側通行になったんだっけ?

終わり。

解説

語り部は鏡の世界と現実の世界を行き来している。
Sくんは二重人格ではなく、鏡の世界と現実の世界での性格が反対になっているだけである。
語り部は友達がいないため、Sくん以外に違和感がなかった。
そして、最後に語り部は元々、鏡の世界の人物。
なので、左側通行であることをおかしいと感じている。

 

青果店

男の家は祖父の代から青果店を営んでいた。
祖父は人の好さと努力家だったこともあり、多くの仕入れ場所と多くの顧客がいた。
そのおかげで、店は繁盛していた。
 
男の父親は幼いころから祖父に連れられて、上手く店を受け継ぐことができた。
 
しかし、男は最初、この青果店を継ぐ気がなく、店の手伝いもやってきていなかった。
大学を卒業し、就職活動をしていたが、結局、就職が決まることはなかった。
そこで男は仕方なく青果店を継ぐことにした。
 
父親から仕事を習い、一人で仕事が回せるようになる。
すると父親は安心して、男に店を任せて引退した。
 
そうなると男は雑な仕事をするようになる。
接客はもちろん、仕入れ先にも横柄な態度をとるようになった。
そのようなことを続けていると、店の売り上げは右肩下がりになっていく。
 
男はそのことに焦り始める、色々と試行錯誤をするが、そうそう上手くいかない。
このままでは閉店することになってしまう。
 
そんなとき、男は大勝負に出る。
それはブームとなっている桃を大量に仕入れて売るということだった。
 
そして、多額の借金をしてお金を工面し、遠方の農家のところへ行って直接交渉してみる。
すると、農家は桃を安く売ってくれ、大量に仕入れることに成功するのだった。
 
終わり。

■解説

桃は到着までに傷まないように、やや硬めに収穫する。
しかし、食べごろの桃を買ってしまったので、到着するころには食べごろが過ぎてしまっている可能性が高い。

 

〈Part601~610へ〉   〈Part621~630へ〉

モバイルバージョンを終了