見本市
男の子供はある病気にかかっていた。
このままでは子供は助からないと医者に言われて絶望する。
そんなとき、男はある見本市に行った。
ある店の前で立ち止まる男。
その店の前には元気な男の子が走り回っていた。
男はすぐに購入を決意した。
終わり。
■解説
その見本市は臓器提供のお店だった。
治験
少年はいつも治験のバイトがあれば、いつも申し込みをしていた。
今回も、報酬がかなりいい治験のバイトがあると聞きつけて、すぐに応募した。
そして、その治験のバイトに採用され、いつも通りに契約書を渡される。
内容はいつもの項目ばかりだったが、1つだけ気になった項目があった。
治験後に結果により追加で依頼させていただきます、というものだった。
つまり、体質によっては追加で強制的に治験を続けて欲しいというものだろうと、少年は思った。
期間が長引くのは面倒くさいと思いながらも、報酬もよかったため、契約書にサインをする。
少年はいつもよりも綿密に検査をされた。
そして、治験が開始され、日々、データを取られていく。
最初の治験が終わり、帰ろうと思った時だった。
スタッフの人に声をかけられる少年。
追加での依頼があるのだという。
面倒くさくなった少年は断ろうとしたが、始める前に書いた契約書を見せられ、渋々、受けることになった。
数日後。
少年の親の元に、多額の報酬が振り込まれた。
終わり。
■解説
治験は臓器移植のためのものだった。
そして、少年の親に報酬が支払われたということは、少年は生きて戻ってきていないことになる。
ということは重要な臓器を取られてしまった可能性が高い。
イルカ
最近、サーファーの友達が、イルカの友達が出来たとはしゃいでいる。
なんでも、彼女が海に行って、呼ぶと絶対に現れるらしい。
はしゃいだ彼女は毎日のように、そのイルカのことについてしゃべってくる。
「その子はね、すっごく頭がいいんだぁ。泳ぐのも早いし」
「お魚をあげると、ハムハムって噛んで食べるのが可愛いんだよね」
「あとね、私の香水がわかるみたい。私の匂いを嗅いで、嬉しそうにするんだよ」
「お腹を撫でてあげると、両目を瞑って寝ちゃうの。それがたまんないんだよね」
はあ……。
毎日、毎日、本当にうんざりする。
まあ、楽しいのなら、何よりなんだけど。
終わり。
■解説
イルカは噛まずに飲み込むし、匂いもわからないと言われている。
そして、眠るときは片目だけを閉じて眠る。
彼女に懐いているのはイルカではない可能性が高い。
彼女は一体、なにと友達になったのだろうか。
あんぱん
学校はイライラする。
学校の奴らは俺を厄介者としか見ない。
だから、そんなときはあんぱんだ。
あんぱんは俺の大好物。
あんぱんがあれば、どんなことにも耐えられる。
イラついた時も我慢できる。
だけど、いきなり、変な奴がやってきて、あんぱんを取り上げられた。
なんか、身体に悪いって。
最初は凄くイラついたけど、俺のことをこんなに心配してくれる奴は初めてだ。
だから、あんぱんは我慢することにした。
そしたら、今まであった怠さも取れた。
気分もよくなった。
脳だって回復した。
もう病院にだって通う必要はない。
これからは俺は普通の人間として暮らしていけるのだ。
終わり。
■解説
語り部が言っているあんぱんというのは、シンナーのことである。
シンナーは脳を委縮させ、幻覚を見せることもある。
そして、一度、シンナーで脳が委縮すると回復することはない。
回復したというのは、語り部が見ている幻覚なのかもしれない。
結婚
ことになった。
終わり。
■解説
男が結婚したと思っていた相手は男だった。
なので、法的に結婚はできなかったということになる。
口パク
ある歌手がいた。
その歌手はヒット曲が続き、誰でも名前は知っているほどの人気歌手となった。
しかし、あるときからその歌手は新曲を出さなくなり、番組も全部口パクで、歌わなくなった。
あるとき、番組プロデューサが理由を本人に聞いてみた。
すると、その歌手は病気で声が全く出せなくなったと答えた。
終わり。
■解説
答えている時点で声が出せている。
つまり、病気というのは嘘の可能性が高い。
布団
女はきっちりとした性格だった。
一人暮らしであっても、毎日、朝、6時に起きて布団を畳み、ゆっくりと朝食を取り余裕をもって会社に向かう。
そんな女の仕事ぶりも、きっちりとしていて会社でも信頼を得ていた。
女は順調に昇進し、入社して5年で部長にまで登り詰める。
多くの部下を持ち、毎日が忙しくなった。
それでも女の朝の習慣は変わらなかった。
しかし、夜の習慣は崩れかかってきた。
終電で帰ることも多く、夕食も抜いて寝ることも多々あった。
そんな忙しいある日。
女は夜明け近くに帰宅した。
晩御飯はもちろん、化粧も落とさず、スーツのままで敷いてあった布団に倒れ込み、眠りについた。
終わり。
■解説
女はいつも布団を畳んで家を出ている。
しかし、この日は布団が敷いてある。
一体、誰が布団を敷いたのだろうか。
はとバス
その夫人ははとバスにハマっている。
子育ても終わり、夫が事業で成功していて、お金は潤沢にあるため毎日のようにはとバスに乗って観光に出かけていた。
そんなある日。
VIPのみの豪華なはとバスの旅という広告を目にする。
豪華なバスに、様々な観光地を回り、高級なお店で食事をするという内容だ。
距離としても東京駅から江の島までなので夫人にとってはちょうどよかった。
あまり聞いたことのない観光会社だったが、夫人はすぐに電話で予約を入れた。
そして当日。
予定の場所に行くと、夫人以外にも多くの客がバスを待っていた。
VIPのみの豪華な旅ということで、客は全員、金持ちだと一見して分かる。
集まった他の客と他愛のない話をしていると、バスがやってきた。
全員が乗り込み、バスは出発する。
添乗員の心地よい声で、観光案内がされ、バスは進んでいく。
そして、3時間ほど走ったところでバスは到着する。
バスから降りるように言われて降りると、そこはちょっとした森の中だった。
それから添乗員に、古びた建物に入るように指示されたのだった。
終わり。
■解説
東京から江の島まで車で3時間はかからない。
そして、到着したところが森というのもおかしい。
もしかすると、このはとバスは金持ちを集団誘拐するために企画されたものかもしれない。
キャンプファイヤー
ある学校で林間学校があった。
今まで自粛していて、久しぶりの林間学校ということと、場所が海ということで生徒たちはかなりはしゃいでいた。
その林間学校では夕ご飯を食べた後は、サプライズとして巨大なキャンプファイヤーと、花火大会が計画されている。
生徒たちが夕食を食べている中、あるグループが食べ終わったと言って勝手に遊び始めた。
そのグループはかくれんぼを始め、各自、色々な場所に隠れる。
5人の中の4人はすぐに見つかったが、残り1人はどうしても見つからなかった。
辺りが暗くなっても、そのグループは最後の一人を探し回っていた。
そして、それから1時間後。
林間学校の予定通り、キャンプファイヤーが行われた。
生徒たちの歓声と共に、悲鳴が上がった。
終わり。
■解説
残り一人はキャンプファイヤーの積み木の中に隠れていた。
つまり、このあと、隠れていた生徒は燃やされたことになる。
トラベルコーディネーター
男はある旅行会社でトラベルコーディネーターをしている。
一昔は景気がよく、従来のプランでも予約は埋まっていた。
だが、最近は景気が悪く、旅行する人も減ってきたため、目玉となるようなプランがなければ予約が入らない。
男は必死で旅行プランを立てるが、全然、人が来ない。
そんな男に対し、会社は何とかしろと圧力をかけてくる。
男は積極的に、旅行にも同行して参加者の意見を聞こうとしている。
そんな中で、旅行者から「プランの派手さよりも口コミを重視する」という話を聞いた。
今はSNSの時代。
実際に旅行に行った人の声が一番あてになるとだという。
そして、今回来ている客は常連ばかりだった。
せっかくの海外旅行なのに、ありきたりな場所ではきっといい口コミをしてくれない。
そこで男は急遽、プランの変更を行う。
普段は選ばないような場所に連れて行き、口コミをしてもらおうとしたのだ。
同行したスタッフからは止めらえたが、逆に止められるような場所こそ、常連が行きたい場所なのではないかと考えた。
そして、男はルートを変更し、普段とは違う場所に案内する。
男が思った通り、客たちは普段見ない光景に満足したようで、みんな写真や動画を撮り始めた。
中には、帰ったらすぐにSNSにアップすると言う客もいた。
男は今回の旅行プランに手ごたえを感じていた。
しかし、その後、その客たちは口コミをアップすることはなく、男が務めていた会社も倒産してしまった。
終わり。
■解説
スタッフが止めるほどのルートは危険ということである。
その危険さゆえに、他の旅行会社もプランに入れていなかった。
つまり、男は客と共に何かしらの事故に見舞われてしまった。
口コミがアップされなかったのは、アップできなかったからである。
また、会社が倒産したのは、客に対し犠牲者を出してしまったからだった。
ヘルメット
男は新兵で初めて戦場へと導入された。
初めての戦場に緊張する中、戦闘が開始される。
上官の指示に従い、仲間と共に相手の軍に突っ込んでいく。
しかし、突如、閃光が走り爆発が起こった。
間近で起こった爆風により、男の被っていたヘルメットが飛んで行ってしまった。
マズいと思った男は代わりになるようなものがないか、辺りを見渡す。
するとちょうど男が被っていたものと同じような大きさのヘルメットが転がっているのを見つける。
幸運だと思い、ヘルメットを拾った男。
だが、男はヘルメットを被るのをやめてヘルメットを地面に戻してた。
終わり。
■解説
落ちていたヘルメットには前に被っていた人間の頭がハマっていた。