本編
男は不治の病にかかってた。
100万人に1人という奇病だ。
その病気の人が少ないということもあり、研究も進んでいない。
そのため、男が完治する確率はほぼ0だった。
それでも男は諦めず、様々なことを試した。
漢方はもちろん、民間療法もすがる思いで試していく。
だが、どれも効果はなかった。
男は次第に生きたいという思いよりも、病気による苦しさの方が上回り始める。
そんな絶望の中、男はある秘湯についての噂を耳にした。
その温泉に浸かれば、どんな病気に犯されていても楽になれるのだという。
男は最初、今まで散々、そのような噂を聞いていたために怪しんでいた。
だが、その温泉に浸かったことで楽になれたという話は、病気の家族からも本当だと聞くことができた。
どちらにしても、このままでは単に死を待つしかない。
なので、男は最後の希望ということで、その秘湯に浸かりに行くことにした。
その温泉に到着する。
温泉特有の強い硫黄のような臭いがするが、別段変わったところはない。
それでも男は温泉に浸かってみた。
ゆっくりと浸かること30分。
男は温泉の効果により、楽になることができたのだった。
終わり。
■解説
秘湯に浸かることで楽になるとは書かれているが、治るとは書かれていない。
そして、その温泉は硫黄の臭いがすると語り部は言っている。
これは硫化水素だと考えられ、濃度が濃いと人体に有害なガスである。
つまり、男は硫化水素中毒により死亡し、『楽』になったのだった。