■本編
男は小さい頃からスノーボードが好きで、父親にねだって毎日のようにスキー場へ連れて行ってもらっていた。
大学に行く頃になると、バイトをして自分で色々な場所のスキー場へ出かけるようになる。
しかし、その頃になるとほとんどのスキー場のコースを滑り尽くしていて、普通のコースでは満足できなくなっていた。
そんなあるとき、男はあるスキー場に危険で閉鎖されたコースがあるという噂を聞きつける。
そのコースでは何人もの死者も出ているらしい。
閉鎖されるほどの危険なコースを滑りたい。
男はそう考えて、その噂のスキー場へ行った。
噂通り、閉鎖されているコースがあり、男は立ち入り禁止の看板を越えてコースへと向かう。
そして、男はさっそくコースを滑り始めた。
だが、噂ほど危険なコースではなかった。
逆に平坦なコースだと感じるほどだった。
一人でコースを専用出来るからいいか、と思っていると、いつの間にか周りには何人かが滑っていることに気づく。
なんだよ。
もう、さっさと帰ろう。
男はため息をついて、スピードを上げた。
終わり。
■解説
平坦なコースなのに、死者が出るということは、それなりの理由があるはず。
そして、閉鎖されているコースに、語り部のように何人も滑りに来るとは考えるのは難しい。
もしかすると、語り部の周りを滑っているのは、このコースで死んだ者たちで、このコースを滑る人間を道連れにしようとしているのかもしれない。