本編
俺の彼女は眼鏡をかけている。
いわゆる眼鏡美人ってやつだ。
けど、伊達眼鏡というわけではない。
本当に目が悪いんだそうだ。
一時期はコンタクトをしてたみたいだけど、どうも慣れなくて止めたらしい。
俺としては彼女の眼鏡が好きなので、それでいいと思う。
しかも、裸眼だと本当に目が悪くて、眼鏡をかけてないと歩いているだけで、色々とぶつけてしまうというくらいだ。
前に眼鏡を落としてヒビが入ったときに、1日、眼鏡なしで過ごしてた時はこっちが心配になるほど、苦労していた。
あと、彼女は少し嫉妬深いところがある。
電車に乗ったときに、近くの女の人の香水の匂いがついてたり、長い髪がついていたりしたら、すごく問い詰められてしまう。
刺されそうな勢いだ。
誤解を解くのに結構、苦労する。
だから、電車に乗るときや他の女の人と会う、サークルの日や飲み会の日は必ず事前に彼女に連絡するのが習慣になった。
そんなある日、サークルの飲み会で、後輩の女の子が悪酔いして泥酔してしまった。
仕方なく、俺は後輩をタクシーに乗せて、家に帰すことにする。
タクシーを止めて、後輩を乗り込ませようとしたときだった。
いきなり、後輩がキスしてきた。
酔ってたからだろう。
すぐに引き剥がして、タクシーに乗せ、後輩の家の住所を運転手さんに伝える。
ドアが閉まりタクシーが走り去っていく。
こんな場面を彼女に見られでもしたら刺されてしまう。
危なかったと思った瞬間。
道路の向かい側に彼女が立っていた。
俺はかなり焦った。
だが、幸運なことに彼女は眼鏡をかけていない。
この距離なら絶対に見えないはずだ。
現に彼女は何事もなかったように歩き出した。
ふう。
今回は彼女の目の悪さに救われたな。
今度から気を付けないと。
終わり。
■解説
彼女は歩くのも苦労するのに、眼鏡をかけずに外出するのは考えられない。
では、どういうことか?
つまり、彼女は眼鏡ではなくコンタクトをしていたと考えられる。
そして、ここまでタイミングよく、その場を通りかかるのだろうか。
おそらく、彼女は嫉妬深いこともあり、語り部が飲み会に行っているのを遠くから見ていたと考えられる。
この後、語り部は彼女に刺されるのかもしれない。