本編
今の整形の技術はかなり凄いらしい。
俺の彼女も結構、ハマっているみたいで、少しずつ整形をしているみたいだ。
元々、彼女は美人だから、俺は別にそれ以上は整形しなくてもいいと思うんだけど、やっぱり女ってキレイを追い求める生き物らしい。
まあ、俺からすれば綺麗になるのは嬉しいことだから、別にいいんだけど。
この前、ふと、彼女の昔の写真を見たんだけど、ビックリした。
ほとんど別人だったんだもん。
いやー、ホント、すごいね整形って。
確かに、昔の彼女の顔だったら付き合ってなかったかもな。
そう考えたら整形さまさまだ。
やっぱりさ、彼氏としては彼女が綺麗になるって自慢になるんだよ。
みんなから羨ましがられてさ。
何かにつけて、彼女を連れましたりしてた。
あれはなんていうか、気持ちいいね。
勝ち組って感じで。
だけどさ。
整形って失敗することもあるんだよな。
結構、大幅に手を入れるってことで、かなりの金額をつぎ込んだみたいなんだけさ。
失敗しやがったの。
普通以下になっちまった。
もう、がっかりだよね。
だからさ、別れることにしたんだ。
あいつからのメールや電話は無視した。
この前、あいつの誕生日会があるって呼ばれたんだけど、バックレたよね。
もう、それで察しろって思うんだけど、それからも頻繁に連絡来てさ。
だから、別れるってメールして、着信拒否してやった。
そしたら、嘘のようにメールとか電話はこなくなったんだ。
まあ、当たり前か。
にしても、あいつくらい綺麗なやつってなかなかいないんだよな。
彼女を作ろうにも、あいつのせいで、俺の中の美的感覚が引き上げられちゃってさ。
少しくらいの美人じゃ、付き合う気にはならないんだよね。
で、どうしようかなーって思ってたらさ。
いたの。
あいつ、そっくりの女が。
もちろん、手術が失敗する前のな。
びっくりしたよ。
そんなそっくりな人間なんていないだろって思ってんだけどさ。
聞いてみたら双子なんだってさ。
なるほどね。
似てるわけだ。
で、俺はその子と付き合うことになった。
俺はその子に忠告しおいたんだ。
整形とかはするなよって。
だって、あいつみたいに失敗したら困るだろ?
その子はしないって約束してくれたから安心だ。
そういえば、来週、その子の誕生日だからプレゼントを買わないと。
少し、奮発するか。
その日は、その子と初のお泊りデートだからな。
終わり。
■解説
語り部の元の彼女は整形していた。
昔の写真とは結構違うと語り部は言っている。
たとえ、双子であったとしても、『手術前の彼女』と同じ顔なのはおかしい。
そして、『この前』、元の彼女の誕生日だったのに、『来週』に誕生日なのもおかしい。
その子は元彼とは全く関係ない人物である可能性が高い。
では、なぜ、その子は双子などという嘘をついてまで語り部に近づいたのか?
何か、深い企みがあるのかもしれない。