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力士

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本編

男は子供の頃から相撲の天才だと言われていた。
小学1年生の頃からわんぱく相撲で負けなしだった。
 
また、中学、高校でも敵なしで周りからは将来、絶対に横綱になれると期待がかけれられていた。
 
だが、男には不安があった。
祖父も父も同じく力士であったが、2人とも関取になれず、若くして引退しているのだ。
 
自分は大丈夫だと言い聞かせ、絶対に横綱になってみせると決意を固める。
 
当然、男は高校卒業後、すぐに相撲部屋に入った。
 
力士としてデビューし、勝ち星を重ねていく。
当然、周りからの期待も膨らんでいった。
 
3年が経った頃、男は十両に上がれるチャンスがやってきた。
相撲の世界で言えば、それは異例の早さと言っていいほどだ。
 
だが、男は焦っていた。
時間がない、と。
 
幕内をかけた大勝負では男は圧巻の強さで勝負を決めたのだった。
 
そこから破竹の勢いで勝ち進み、大関へと昇進した。
さらに男はその年、全勝で優勝を果たし、ついに横綱の道も見えてきた。
 
次の年。
相撲ファンは唖然とした。
 
なんと男が引退を表明したのだ。
怪我でもなく、絶頂期での引退。
 
周りは引退を惜しんだが、引き留める者はいなかった。
 
そして、引退の断髪式の日。
男は髷を落とせず、泣いたのだった。
 
終わり。

■解説

男は頭部が薄い家系であった。
若くして、進行が激しく、髷が結えない状態になってしまったため、祖父も父も引退している。
そして、男も同様に髷が結えなくなり、引退を決意したのだ。
断髪式の当日も、髷を結えなかったことで髷を落とせずに泣いたというわけである。

 

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