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示談金

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本編

青年の親は金持ちだった。
小さい頃から何不自由なく育った青年だが、それを鼻にかけることなく、真っすぐに成長した。
 
大学生になると、親から自立するため、一人暮らしを始めてアルバイトで学費を稼ぐと言い出した。
親は、青年がそう言ったことに感動し、最後に車だけプレゼントしたいと、半ば強引に車を買い与えた。
 
青年は感謝し、その車を大切に乗っていた。
 
だが、そんなある日。
青年はバイトと大学の授業で疲れ果てていた。
 
バイトの帰り道に居眠り運転をしてしまい、ある男をはねてしまう。
轢かれた男は打ち所が悪く、下半身不随となってしまった。
 
男は青年に対して、怒り狂い、一生かかってでも償ってもらうと言い出す。
町の中でも有名なごろつきで、人に迷惑をかけてばかりの男だった。
 
男の周りの人間は今まで悪さした罰が当たったのだと噂する。
それも気に入らなかった男は、ことあるごとに青年に当たり散らした。
毎日のように見舞いにこさせ、そのたびに高い物を要求し、ついには金までせびり始める。
 
青年の親が見かねて、弁護士をつけて男との接触をさせないようにした。
しかし、男は部下を使い、青年と接触する。
弁護士は男に慰謝料を払うことで示談を申し出る。
だが、男はたとえ、1億円を積まれても絶対に示談に応じる気はないと言う。
 
男の両親は、相手の青年を不憫に思い、息子である男を説得するが聞き入れてはくれない。
それどころか、男は両親に対して、はした金で示談させようとすることにイラつき、暴力を振るう始末だった。
 
周りの人間が困り果てていたとき、一人の女性が現れ、青年の両親と男の両親にこう言った。

「1000万をいただければ、示談を成立させてみせる」と。
 
もちろん、青年の両親は二つ返事でお願いしますと答える。
 
数日後。
女は見事、3000万で示談を成立させた。
 
終わり。

■解説

男は1億円でも示談には応じないと言っていたのに、なぜ3000万で示談が成立したのはおかしい。
そのため、男は3000万の金額で了承していないと考えるのが自然である。
だが、男以外が示談を決められる場合がある。
それは被害者が死んだときで、その場合は男の親族が決められることになる。
つまり、女は男を1000万で始末した可能性が高い。

 

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