〈前の話へ:人生ゲーム〉 〈次の話へ:いわく付きの廃アパート〉
本編
少年たちは1度、暴走行為をして全国でニュースとして放送された。
有名人になれたことを少年たちは喜び、また、そのことが忘れられないでいた。
またあの時みたいにみんなに注目されたい。
そんなことばかり考えていた。
そこで少年たちは成人式の日を待ち続ける。
そして、待ちに待った成人式の日。
少年たちは成人式に出た後、にやにやしながら車に乗り込む。
この日のために派手に改造していた車。
これなら遠くにいても目立とうはずだ。
少年たちは爆音を鳴らし、車体の上に乗り、騒ぎながら車を走らせる。
もちろん、少年たちの中に車の免許を持っている者はいない。
少年の中の一人が、運転している少年に言う。
「お前、ちゃんと運転しろよ。前みたいに事故ったら台無しなんだから」
「わかってるって。もう、あんなヘマしねーよ」
しかし、誰にも全くと言っていいほど注目されない。
さらに、道路は渋滞し始めた。
イライラした少年たちの中に一人がいきなり、こんなことを言い出した。
「歩道走ればいいんじゃね?」
その言葉に少年たちはおお、と歓声を上げた。
確かにこれならニュースになること間違いなしだろう。
また全国でニュースになる。
さっそく運転手は歩道へ車を乗りあげる。
そして、多くの人が歩いている歩道で、アクセルを全開に踏み込んだ。
しかし、そのことは全国どろころか地方のニュースにもなっていない。
SNSでの書き込みも0だ。
「あーあ。今年もダメか。また来年再チャレンジだな」
少年たちはガッカリして肩を落とした。
終わり。
■解説
成人式は人生で1回しか出られないはずである。
なので、『来年』にもう一度チャレンジするのは無理である。
そして、歩道に人がいる中で、車を暴走させたのに、なぜニュースにもならなければSNSでも書き込まれなかったか。
それは『誰も気づかなかった』からである。
少年たちは成人式で暴走し、事故を起こして全国でニュースとなった。
つまり、少年たちは既に死んでいて、幽霊の状態で暴走していたため、誰にも気づいてもらえなかったというわけである。
また、少年たちは死んでいて年を取らないので、来年も成人式に出る予定を立てている。