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人生ゲーム

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本編

社会の爪弾き者なんて、世の中にはごまんといる。
俺もその中の一人ってわけだ。
 
今年で40歳だが、高校を卒業してから1度も就職はおろかバイトもやったことはない。
いわゆる典型的な引きこもりで、ニートってやつだ。
あー、いや、この年齢になるとニートじゃなくて、無職になるのかな?
 
とにかく俺は人生の半分以上の時間を家でゴロゴロして過ごしてきたわけだ。
母さんから月に1万のお小遣いをもらい、月に1、2回飲みに行くのが人生の唯一の楽しみになっている。
 
そんなある日。
居酒屋で、一人で飲んでいると、見知らぬ男が話しかけてきた。
 
その男は今回の会計は全てこちらで持つから、話を聞いてくれないかと言ってくる。
物凄く怪しいと思ったが、話を聞くだけだし、何より奢って貰えるというのはかなり美味しい。
はいはいと頷くだけで数千円儲かるなら、多少怪しくても無職の俺としては断る理由は無かった。
 
男はあるイベント会社に勤めていて、それに参加してくれる人を探しているらしい。
それはいわゆる、『リアル人生ゲーム』のようなもので、人生ゲームを実体験できるというものらしい。
 
月に1度、ルーレットを回し、止まったマスに書かれていることが実体験できる。
お金を貰えると書かれていれば、実際にお金が貰えるのだという。
こんなに美味しいゲームはないと男は力説する。
 
やっぱり、そういう怪しい勧誘かと思い、断ろうと思ったが男は結構、粘り続けた。
そこで、俺は「そんなに美味しいゲームなら、俺じゃなくてもやりたい奴はいっぱいいるでしょ」と言ってやった。
いわゆる、「儲かるならお前がやれよ」というような感じだ。
 
しかし、男はこのゲームはニートか無職の人しかできないのだという。
なぜかと聞くと、このリアル人生ゲームはゴールするまで大体3年かかるというのだ。
その間、時間を割くことができるのはニートか無職の人間だけ。
つまりは無職専用ゲームというわけだ。
 
その言葉が妙に俺の心に刺さった。
無職であることでできないことは数多くあるが、無職じゃないとできないなんてことは初めて言われたからだ。
 
俺は男に会費とか、参加費がかからないのかを何度も確認した。
男はそういうのは一切かからないと断言する。
 
そこで俺はその人生ゲームに参加することにした。
 
人生ゲームに参加する際のルールは簡単なものだった。
まず、毎月1度、必ずルーレットを回しに会場に来ること。
止まったマスに書かれていることは必ずやること。
それ以外は自由に過ごせるというものだった。
 
俺はさっそく、ルーレットを回した。
出た目は4。
4マス進んだ先には『100万円貰える』と書かれていた。
 
すると男が100万を手渡してくれ、「このお金は自由に使ってもらって結構です」と言われた。
だが、同時に「もし、お金を払うというマスに止まれば、払っていただくことになるので、お金の管理はしっかりやってください」とも注意された。
 
ルーレットは最大で6マス進める。
俺は自分の先の6マス以内にお金を払うマスがないかを見る。
3マス先に『10万円を払う』というマスしか、お金を払うマスはなかった。
最悪10万は残しておけばいい。
そう考えて、俺は1ヶ月間で90万を使った。
 
次の月は保険に入るかどうかを聞かれただけだった。
そして、その次の月は『転職』マスだった。
なんと『パイロットになれる』と書かれていた。
 
もちろん、断ることはできるらしい。
ただ、その場合、『給料』としてもらえる額は低くなってしまう。
だが、パイロットになれば、給料は月に100万円が支給される。
 
俺はもし、パイロットになれば働かないとならないのか?と聞くと、それは自由だと言われた。
働いてもいいし、働かなくてもいい。
給料はどちらでも変わらないらしい。
 
そこで俺はパイロットになることにした。
すると、社員証と名刺を渡される。
今から、俺はここの会社の社員らしい。
 
そんな馬鹿なと思い、俺は名刺に書かれていた会社へ行くと本当に社員として中に入れた。
しかも、パイロットとして働くことができるのだ。
もちろん、操縦はさせてもらえないが、コックピットに入らせてもらえた。
人生で初めて飛行機になり、CAと話すことができた。
 
それが嬉しくて2週間くらいは出勤したが、途中で面倒くさくなり、行くのを止めた。
 
そこから数ヶ月すると、今度は『結婚する』というマスに止まった。
すると、男はカタログを持ってきて、「結婚する相手を選んでください」と言ってきた。
カタログに載っていた女は全て、美人だった。
 
俺は好みの女を指差す。
すると男は「かしこまりました」と言って、どこかに行ってしまった。
 
次の日。
家に、カタログで選んだ女がやってきた。
そして、戸籍上でも俺たちは結婚していることになった。
 
なんと、人生で初の彼女どころか、一気に嫁ができたわけだ。
 
そこからは本当に人生バラ色だった。
『子供が生まれる』というマスに止まれば、本当に嫁が妊娠し、子供が生まれた。
もちろん、俺と嫁の子だ。
 
何回かは事故に遭ったり、お金を払うというマスに止まったが、そんなのは全然問題ないほど、俺は幸せの絶頂だった。
 
そして、3年が過ぎた頃。
ついに、この人生ゲームの終わりも見えてきた。
 
そこで、俺は男にゲームをクリアしたらもう1度やりたいと言ったが、男は「2度はできないようになっています」と返された。
こんな楽しいゲームが終わってしまう。
 
でも、この3年間は本当に楽しかった。
おかげで妻と子供も持つことになり、色々な仕事も経験できた。
 
俺は3年間の思い出を噛みしめ、最後のルーレットを回した。
最後のマス。
 
そこには『人生のゴール』と書かれていた。
 
終わり。

■解説

ルールとして、止まったマスに書かれていることは実行しなくてはならない。
そして、『人生のゴール』というのは『死』である。
つまり、この後、語り部は殺されることになる。
男が「2度はできない」と言ったのは、ゴールすると死ぬからである。

 

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