■本編
俺は昔から特に霊感がないと思っていたんだけど、どうやら違ったみたいだ。
この家に引っ越してきたとき、最初の1年くらいは特に何もなかったが、不可解なことが徐々に起こり始めた。
というのも、いつの間にか物の配置が変わっていたり、物がなくなったり、増えたりするようになった。
気になって調べたけど、別に事故物件というわけでもなかった。
おかしいなと思いつつ、特に幽霊がいるって感じがするわけじゃないけど、そういうことが続くとやっぱりちょっと不気味だ。
だから俺は引っ越すことにした。
年末に急に引っ越しとなると、多少は引っ越しの値段が高くなるが、新年を気持ちよく迎えたいため、引っ越しを決行することにした。
引っ越し自体は無事に終わり、荷ほどきまでは終わらなかったが、清々しい気分で新年を迎えられた。
年が明けたと同時に、友達から、あけおめメールが届く。
それを見て、そういえば誰にも引っ越したことを言ってないなと思い、あけおめメールの返信に引っ越したことを書いて送った。
引っ越しでバタバタしてたせいで、家の中には食材がない。
しぶしぶ、コンビニに買い物に行く。
そして、帰ってきたときに、ふと、郵便受けに何かが入っているのを見つけた。
年賀状。
送り主は聞いたことがあるようなないような人からだった。
そういえば、家族にも伝えてなかったし、郵便局にも転送届を出してないことに気づいた。
とりあえず、俺は明けましておめでとうを言うために、母親に電話を掛けた。
終わり。
■解説
誰にも教えていない、また、転送届もしていないのに、新しい住所に年賀状が届くのはおかしい。
つまり、語り部の違和感は幽霊の仕業ではなく、ストーカーが家に入り込んでいたことの違和感だった。
また、年賀状も転送届をしていないはずなので、郵便として届けられたのではなく、ストーカー自身が郵便ポストに入れた可能性が高い。