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■本編
その少年は我儘で、町の住人の中でも有名だった。
また、最悪なことに少年の両親はかなりの富豪で権力を持っていることから、誰も少年に逆らうことができなかった。
少年は常に世の中を恨み、周りの人間を妬み、不公平を呪った。
両親の方も少年に対して負い目があるのか、少年の我儘を全て受け入れて叶えていた。
それがさらに少年を助長させるという悪循環を生んでいる。
どんなに憂さ晴らししても、少年の中の怒りや絶望、嫉妬は拭い切ることはできない。
そんなある年のクリスマス。
少年はサンタクロースに、あるプレゼントをお願いする。
それは「世界中の人間の両腕」というものだった。
そして、クリスマス当日。
少年の元にはたくさんのプレゼントが届いた。
ゲーム、漫画、映画、アニメが揃っていた。
少年は絶望し、自らの命を絶った。
終わり。
■解説
少年は盲目。
そのため、健常者全てを憎んでいた。
なんで、自分だけが目が見えないという不自由を受けなければならないのか。
そこで、少年は世界中の人間の腕を消せば、同じように不便になると考えた。
(世界中が自分のように不幸になればいいと考えた)
しかし届いたのは、「見ることでしか楽しめないもの」ばかりのもの。
少年はこの先もずっと、プレゼントされたものを楽しむとができないと改めて提示されたため、絶望したのである。