■本編
コールとカインは親友同士。
どこに遊びに行くのも一緒で、周りからは家族以上に仲がいいと言われ、本人たちもそう思っていた。
その日も、いつも通り森へと一緒に遊びに行った。
ただ、いつもと違ったのは、いつもよりも森の奥へ入ったことにより、古びた館を見つけたことだった。
当然、2人は興味に駆られ、館へと入って行ってしまう。
だが、その古びた館には女のヴァンパイアが住んでいた。
2人は抵抗も虚しく捕まってしまう。
コールが目覚めると、暗い部屋の中で椅子に座らされ、ロープで縛られていた。
怯えて命乞いをするコールを見て、ヴァンパイアはあることを思いついて、コールに提案する。
その提案とはこういうものだった。
「あんたの友人は別の部屋にいるんだけど、これから2人に同じ質問をするわ」
「選べる返答は2択よ」
「1つは『沈黙』。もう1つは『自分の血を捧げる』というもの」
「もし、2人とも『沈黙』を選んだ場合、2人の血を全部吸う」
「もし、2人とも『自分の血を捧げる』と答えたら、その友情に免じて、2人から致死量ギリギリの血を吸ってから2人とも逃がしてあげる」
「もし、1人が『沈黙』で、もう1人が『自分の血を捧げる』と選んだ場合は、『自分の血を捧げる』を選んだ方の血を全部吸って、『沈黙』を選んだ方は無傷で逃がしてあげる」
そう説明した後、ヴァンパイアは「さあ、どうする?」と質問してきた。
コールは頭の中で整理する。
「もし、僕が『血を捧げる』と言って、カインが『沈黙』だった場合、僕の血が吸われてしまう。でも、それはカインが僕を裏切るってことだ。大丈夫。カインは絶対に僕を裏切らない。もし、血を吸われることになっても2人とも助けてもらえる方を選ぶはずだ」
コールは自信満々で『自分の血を捧げる』と答えた。
するとヴァンパイアは「ふふっ、残念」と言って、コールの首筋に噛みついた。
物凄い勢いで血を吸っていくヴァンパイア。
明らかに致死量以上の血を吸い続けていく。
コールは薄れゆく意識の中で、ヴァンパイアの「ごめんなさいねぇ。どっちを選んでも同じなのよ」と言う言葉を聞いた。
終わり。
■解説
ヴァンパイアは「2人に同じ質問をする」と言っていたのに、カインに質問の答えを聞きに行かなかった。
また、この提案はコールと話している中で思いついたことなので、あらかじめカインに答えを聞いておくということもできなかったはず。
それなのに、ヴァンパイアが聞きにいかなかったのはカインの回答を「知っていた」ことになる。
また、最後にヴァンパイアは「どっちを選んでも同じ」と言っていることから、コールが「沈黙」でも「自分の血を捧げる」を選んでも「同じ」ということを意味する。
そうなると、考えられることは1つ。
それはカインが「沈黙」と答えること。
つまり、ヴァンパイはカインが「沈黙」と答えることを「知っている」ということ。
では、なぜ、知っていたか。
それはカインが「沈黙」しか選べなかったと考えられる。
カインは既に全部の血を吸われていた可能性が高い。