本編
一ヵ月前、俺は交通事故に遭った。
信号待ちをしていたら、わき見運転をしていた車が突っ込んできたのだ。
運転手はスマホを見ていたらしい。
本当に最悪だ。
移動中にまで、スマホを見るとか頭おかしいだろ。
まあ、俺もスマホを見ていたせいで車が来ても逃げられなかったというのもあるんだけど。
ただ、俺の場合は信号待ちで止まっていたから、非難されることはないはずだ。
車は結構な勢いで突っ込んできて、轢かれたときに、かなりの衝撃を受けた記憶があるが、意外にもほとんど怪我がなかった。
だから、3日くらいの入院で済んだ。
本当にラッキーだ。
だが、その事故から一つ、気がかりなことが起こるようになった。
それはニュースの夢を見るというものだ。
テレビとか、スマホとか、電光掲示板とか、とにかくニュースが流れているのを見ているという夢だ。
その夢というのが、かなりリアルで政治家の誰が汚職したとか、芸能人が不倫したとか、どこかで事故が起こったとか、色々なニュースが流れる。
しかも、起きたときに、そのニュースの内容を忘れることもなく、はっきりと覚えている。
さらに奇妙なのが、そのニュースが『現実でも流れる』というものだ。
夢で見た光景が、現実でも起こる。
大体、夢を見てから5日以内に、そのニュースを見るという場面に遭遇する。
最初はデジャヴかと思った。
だが、夢で見た内容と一致していることが何度も続き、偶然とは思えなくなった。
だから、これは予知夢のようなものなんだろうと思う。
だけど、この予知夢は全くと言っていいほど、特にならない。
なぜなら、身近なことじゃないし、予めそのニュースを知ったところで何もプラスにならない。
だって、政治家の汚職とか芸能人の不倫とかを先に知ったところで、どうということはない。
まあ、せいぜい、ネットに書き込んで預言者だ、とか言って注目されるくらいだろうか。
承認欲求が強い奴なら、いいかもしれないけど、俺はそういうのに興味はない。
なので、正直に言って、この夢はウザい。
こんな面白くない夢なんて、見ない方がマシだ。
とはいえ、どうせ今日もニュースの夢を見るんだろうな、と思いながら寝る。
しかし、今回は違った。
真っ暗な中、何も聞こえず、何も映らない。
ただ、それだけの、変な夢だった。
そして、その日から、もう3日以上、ニュースの夢を見なくなった。
終わり。
■解説
語り部が見ていたのは『ニュースを見るという予知夢』だった。
しかし、真っ暗な夢を見てからは、3日以上、『予知夢』を見ていない。
それは語り部が『ニュースを見れなくなった』ということなのかもしれない。
つまり、語り部はあと数日で、何も見えなくなる、もしくは死ぬのかもしれない。

