本編
俺は霊感が強いみたいで、子供の頃から幽霊が頻繁に見えていた。
幽霊は、生きている人と見分けがつかないくらいはっきり見える。
しかも、見えるだけじゃなく、会話ができてしまう。
だから、幽霊と話し込んでしまって、周りからは変人扱いされていた。
そんな俺を救ってくれたのがUだった。
Uも多少は幽霊が見えるらしく、俺が幽霊かどうかが分からない場合でも、Uが幽霊かどうかを教えてくれる。
だから、Uと出会った高校のときからは、俺は周りから変人扱いされなくなった。
これもUのおかげだ。
ただ、大学に入る頃になると、どうやら俺の霊感はかなり強くなっているみたいで、大量の幽霊が集まってくるようになってしまった。
あまりにも多くの幽霊に憑りつかれるので、ドンドンと体調も悪くなり、ノイローゼ気味になった。
そんなとき、Uが有名な霊能力者のところに連れて行ってくれた。
だが、その霊能力者でも、俺の霊感の強さはどうすることもできないらしい。
そこで、霊能力者は、俺に対してある『呪い』をかけることで対処することにした。
まず、常に1人の幽霊が憑りつくという状態にする。
そして、1人の幽霊が憑りついているときは、2人目の幽霊が寄ってこないという呪いだ。
確かに、今まで複数の幽霊に憑りつかれたことで、大変な目に遭った。
それが1人に絞られるなら、幾分マシだと思ったから、俺はその霊能力者に『呪い』をかけてくれるようにお願いした。
その呪いのおかげで、俺は複数の幽霊に付きまとわれることはなくなった。
ただ、常に、俺の背後には幽霊が一体いる。
これはこれで不気味だが、複数人に憑りつかれるよりはずっとマシだ。
俺の体調も随分と良くなり、Uは自分のことのように喜んでくれた。
だけど、やっぱり、幽霊が常に背後にいるという状況に嫌気がさしてくる。
別にその幽霊が何かしてくるというわけじゃないが、常にみられているような気がして、心が休まらない。
だから、なんとか、今、後ろにいる幽霊を成仏させようと試みた。
お札を貼ったり、お経を唱えたりして、幽霊を成仏させても、また次の幽霊が背後に居座る。
そんな悩みをUに打ち明けると、Uは「ある方法を思いついた」と言い出した。
もし、成功すれば、もう二度と幽霊に悩まされなくなるとUが言った。
Uは「少し準備してくる」とだけ言って出て行った。
それから数時間後、再びUがやってくる。
すると、今まで俺の後ろにいた幽霊がどこかに行ってしまった。
あれ以来、一度も幽霊は現れなくなった。
俺はUに感謝した。
いや、感謝してもしきれないくらいだ。
ただ、最近はまた別の悩みが出てきた。
それはUが家に帰らないことだ。
ずっと俺の家に入り浸っている。
さすがに、そろそろ帰ったらどうかとUに言うと、Uから「俺が帰ったら、また幽霊に憑りつかれるぞ」と返される。
確かにそれは嫌だ。
でも、やっぱりUがずっと家にいるという状況にも嫌気がさしてきている。
Uは俺の恩人だが、それとこれとは話が違うと思う。
これじゃ、幽霊がUに代わっただけだ。
終わり。
■解説
Uが思いついた方法とは、自分が死んで幽霊になり、語り部に憑りつくことだった。
呪いのルールでは「すでに1人の幽霊が憑いている限り、他の幽霊は近付けない」ため、Uが憑いている間は語り部は他の幽霊に悩まされない。
その代わり、語り部は今度はUという幽霊とずっと一緒に暮らすことになった。

