本編
ある男の死体が発見された。
そこは窓一つないコンクリート造りの部屋だった。
扉も一つしかなく、内側から固く締められていた。
そして、合鍵はなく、鍵は男の手に握られていた。
使用人の話では、男は3日前からこの部屋に引きこもり、一度も部屋の外には出なかったという。
なんでも、男の元に殺害予告が送られていて、男はそれに恐怖していたのだという。
だから男はしばらく、この部屋の中で過ごすことにし、誰も部屋には近付けないように指示されたと使用人は言う。
男はアコギな商売をしていて、男を恨む人間は大勢いたようだ。
しかも、実行に移しそうな人間も、両手で数えきれないほどいるみたいだった。
だからこそ、男はその予告を信じ、引きこもったのだ。
そして、今日の昼過ぎに、男の悲鳴が聞こえて使用人が集まり、扉をノックしたが返事がなかったため、通報したのだという。
警察が駆け付けたときには、扉が閉まっていたことは確認できたし、扉を破る際も異常は見当たらなかったと警察官は証言している。
男の死因は首を絞められたことによる窒息死だった。
犯人は素手で首を絞めたらしく、男の首には指紋が残っていた。
刑事はその指紋を頼りに捜査を開始する。
すると半日も経たずに、刑事はある中年の女性に辿り着いた。
その女性は男に多額のお金を騙し取られている。
殺害する動機には十分だった。
だが、刑事が踏み込むと、女性は既に亡くなっていた。
首を吊っての自殺だった。
検死では死後3日経っていると判明する。
男が部屋に閉じこもった時期とも一致していたため、刑事は、男を殺害したあとに自殺したものと考えた。
なんとも後味の悪い事件だと、刑事はため息をついたのだった。
終わり。
■解説
男が悲鳴を上げ、死体を見つけてから半日も経たずに女性の元へ辿り着いている。
しかし、女性は死後3日経っている。
つまり、女性は男が殺される前に死んでいることになる。
さらに男が殺されていたのは『密室』だった。
もしかすると、女性は恨みを残して死ぬことで幽霊になり、男を殺しに行ったのかもしれない。

