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懐かしい公園

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本編

夫と結婚して、早10年。
娘もついに小学校に入学した。

思えば、この10年は必死に生きてきた。
なぜなら、私たちはほとんど駆け落ち同然で家を出てきたからだ。

そんな状態で結婚したのだから、お互いの両親はもちろん、兄弟にだって頼ることはできなかった。

そして私たちは決してお金持ちではない。
いや、逆に貧乏と言った方がいいくらいだろう。

そんな経済環境の中、娘を育てていくのは、本当に大変だった。
当然、私もパートに出て、共働きをしていた。
なので、私も夫も、ほとんど家にいる時間はなかった。
それに娘は人見知りということもあり、まったく友達もいないようだ。
そう考えると娘には随分と、寂しい思いをさせてしまったと思う。

でも、娘はそんな私たちのことを思ってか、寂しいということもなかったし、駄々をこねることもなく、真っ直ぐに育ってくれた。

そんな中、夫の事業が軌道に乗った。
人も多く雇えるようになり、私は働かなくて大丈夫になったし、夫も割と早く家に帰れるようになった。

私と夫は今まで寂しい思いをさせていた分、今度はしっかりと時間を取ってあげようと話し合う。

休みの日には3人でお出かけをする。
それが当たり前になっていった。

そんなあるとき、夫が久しぶりに、あの公園に行こうと誘ってくれた。

結婚する前は割と頻繁に行っていた公園だ。
花畑や噴水もあり、ピクニックもできる。
お金のない、私たちの定番のデートスポットだった。

本当に懐かしい。
行くのは夫にプロポーズされて以来だ。

そして、次の週末。
私はいつもより気合の入ったお弁当を作り、夫が運転する車で2時間かけて公園へと向かった。

到着すると、当時の記憶が一気に蘇ってくる。

夫も「お前と、二人で来てた時と変わってないな」と、久しぶりに来た公園を懐かしんでいた。

公園はしっかりと管理されていて、夫が言う通り、あの頃と全く変わっていない。
人も割といるが、混雑しているというほどでもなく、ほどよく賑わっているという感じだ。

夫は前もって買ってあったオモチャで娘と遊び始める。
フリスビーやバドミントン、どこで買ってきたのか、凧なんかも用意していた。

夫は娘と一緒にはしゃいでいた。

そんな2人を眺めているだけで幸せだった。

すると娘がこっちに走って来る。

「ママ、トイレ」

そう言って、私の手を掴んで歩き始める。
娘もお年頃なのか、さすがに夫にトイレに連れて行ってもらうのは抵抗があるようだ。

「わたしね、この公園、好きだよ」

そう言って、私の前でスキップしながら公園の奥へと進んでいく。

「ドアのゾウさんも可愛いよね」

娘がニコニコしながら、そう言った。

トイレのドアには、昔から誰が描いたのかわからないゾウの絵があった。
たぶん、子供の落書きだろう。
上手くはないのだけど、妙に味のある絵だ。

トイレに着くと、娘はそのゾウの絵が描いてある個室へと入って行った。

その後も、娘と夫はオモチャで遊び、お弁当を食べ、存分に1日を楽しんだ。

「また来たいね」

娘が笑いながらそう言った。

私と夫は顔を見合わせて、大きく頷く。

今回、娘を公園に連れてきて、本当によかった。

終わり。

■解説

語り部たちが最後にこの公園に行ったのは「プロポーズの時」と言っている。
つまりは「結婚する前」である。
ということは娘は「一度もこの公園に来たことがない」はずである。
それなのに、トイレの場所と、トイレのドアに描かれているゾウの絵を知っているのはおかしい。

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