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【洒落怖】当たりの2本目

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今はもう見ないけど、昔は自動販売機にルーレットがついているのがあったんだよね。
1本買うと、ルーレットが回り始めて、当たりに止まったらもう1本出てくるんだ。

当時は、当たったらラッキーって思ったけど、今考えるともう1本なんて飲めないから、邪魔だよね。
誰かにあげるにしても、好きなものを選べるわけじゃないし、そのジュースが嫌いだったら、貰っても迷惑にしかならない。

そういうこともあったからなのか、純粋に不景気だからか、今はそういう当たり付きの自動販売機は見なくなった。
というより、自動販売機自体、あんまり見なくなった気がする。

だから、ルーレットがついた自動販売機を見つけたら、思わず買ってしまう。
別に喉が渇いてなくても。

あの日は、営業の仕事で田舎の方に行ったんだ。
社用車を運転して。

仕事の方は上手くいって、少しテンションが上がっていた。
鼻歌交じりで運転していると、ふと、自動販売機が目に入った。
ルーレット付きの。

暑くて、喉が渇いていたし、コンビニも見つからなかったからラッキーと思った。
俺は直ぐに車を停めて、自販機の前に立つ。
そして、さっそくスポーツドリンクを買ったんだ。

ボタンを押したと同時にルーレットが回り始めて、ゆっくりと止まる。
なんと、当たりににだ。

すると自動販売機から「おめでとう! おめでとう! おめでとう!」と馬鹿でかい声が流れて、ルーレットがビカビカと光り始めた。
そして、その後、ゴトンとやけに重いものが落ちた音がした。

明らかにペットボトルが落ちてきたとは思えないくらいの音だった。
それこそ、2リットルのペットボトルが落ちてきたくらいの感じだ。

もちろん、その自動販売機には2リットルのペットボトルなんてない。
いったい、何が出てきたんだろうと思って、取り出してみた。

それを見たとき、あまりにも衝撃的で頭の中が真っ白になった。

小さなおっさんだった。
どこにでもいそうな、普通のおっさん。
だけど、身長が20センチくらいしかない。
格好は、漫画とか絵本とかでよく見るような、ザ、妖精って感じだった。
緑色のタイツみたいなものを着ていて、頭にはサンタのような帽子を被っている。

なんで、こんなマニアックなフィギュアが自動販売機から出てくるんだ?

頭が混乱しつつも、マジマジとそのおっさんを見ていたら、ある違和感に気付いた。

フィギュアにしては柔らかい。
それに、小さく、ピクピクと動いていた。
そして、ギョロリとこっちの方を見たんだ。

俺は悲鳴を上げて、その小さなおっさんを放り出して、車に乗り、猛スピードでその町を出た。
帰るまでの間、あれは見間違いだと自分に言い聞かせて。

いつもなら、カップ麺か弁当を買って、家で食べるのだが、その日は何ていうか、不気味な体験をしたことで一人になりたくなかった。
だから、居酒屋で飯を食べ、そのまま閉店まで飲んだ。
そして、運転代行を使って、家まで帰る。
結構、痛い出費だったけど、手に残った、おっさんの感触を紛らわすには飲まずにはいられなかったんだ。

ほぼ泥酔状態で家に帰り、なんとか背広だけは脱いでそのまま寝た。

次の日。
二日酔いで頭が痛かったけど、そんなんで仕事を休むわけにはいかない。
痛い頭を押さえながら、脱ぎ散らかした背広を着る。

そして、凄く喉が渇いたので、冷蔵庫からコーラを出そうとしたときだった。
ふと、シンクの上に紙が置いてあることに気付く。

『おめでとう』

だた、それだけが書かれた、メモ帳くらいの大きさの紙が置いてあった。
それは凄い綺麗な字で、どう見ても、俺の字じゃない。
俺は一人暮らしだし、合鍵を渡すような恋人や友人もいない。
一瞬、母親かと思ったが、母親にだって合鍵は渡してない。

だとすると大家さんくらいしか、この部屋に入れる人間はいないはずだが、大家だからといって、いくらなんでも本人に黙って部屋に入るわけはないはずだ。

なんでこんな紙が、キッチンにあるのかは不思議だったが、あまりゆっくりもできない。
俺は紙をゴミ箱に捨てて、会社へと向かった。

その日は二日酔いのせいで、ほとんど仕事にならなかった上に、昨日取ってきた契約が、課長のものにされていた。
課長は時々、こういうことをする。
結構、大きな契約は、自分が取ってきたことにするのだ。

それもあり、課長は下の人間からは物凄く嫌われている。
けど、逆に上からは物凄く気に入られている。
だから、課長というポジションになれたんだろう。

とにかく、最低な気分で、帰宅した。
イライラしていたせいで、帰りに弁当を買い忘れてしまった。
そのことで、余計にイラつく。
仕方ないので、買い置きしていたカップ麺で済ますことにする。

お湯を沸かそうと、ヤカンを手に取ったときだった。

また、シンクの上に一枚の紙が置いてある。

『誰を殺して欲しい?』

今度はそう書いてあった。

そのときの俺は、はっきり言って正常じゃなかった。
前の日の酒も残っていたのと、イライラのせいで、紙の不気味さよりも憎しみの方が上回った。

だから思わず、ポケットからボールペンを出して、課長の名前を書いた。
書いてしまった。

次の日。
会社に行くと、社内は大騒ぎになっていた。

なんと、課長が自殺したらしい。

誰がどう見ても、課長は自殺するタイプの人間じゃない。
逆に嫌いな人間や、出世の邪魔になるような人間を、自殺に追い込む側の人間だ。
だから、みんな、課長が自殺したということに違和感を覚えた。
もちろん、俺も。

だけど、そんな違和感よりも、課長がいなくなったということの方が、みんなにとってはよかったことなので、自殺のことは誰も気にしなくなった。

ただ、俺だけはあまりにもタイミングが良すぎて、恐怖を感じていた。

その日、帰ってみたら、紙はなくなっていた。
もちろん、捨てた覚えもない。

それからもう半年が過ぎるが、紙が置いてあるということは一度もない。

だから、俺の中で、あれは妙な偶然が重なったと納得することにしている。

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