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【洒落怖】優しい隣人

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10年前。
私は転職するにあたって、引っ越しをすることにした。

転職前の会社はブラックで、家には寝に帰るだけだったから、住む部屋については特にこだわっていなかった。
ただ、引っ越しした後、転職先の会社の同僚に、驚かれてしまった。
アパートのセキュリティはもちろん、周りの住人に変な人がいたらどうするのかと、忠告される。
言われてみれば、確かにそうだ。

転職先の会社は時々は残業があるけど、基本は定時であがれる。
だから、割と家で過ごす時間が多い。
となれば、同僚の言う通り、近所に変な人がいれば生活にかなり影響が出る。

それに引っ越したばかりだから、またすぐに引っ越すためのお金もない。
だから、近所に変な人がいないようにと祈るしかなかった。

そんなことを心配しているうちに、1ヵ月が経った。
その間、特に近所トラブルはなく、これなら大丈夫かと安心する。

そんなとき、ふとしたタイミングで隣の部屋のKに声を掛けられた。

同じくらいの年齢で、同性ということもあり、顔を合わせるたびに話すようになった。
それから1ヵ月も経つ頃になると、かなり親しくなり、お互いの部屋に行って、ご飯を食べるくらいになる。
休日もほとんど一緒にいるようになるまで、そこまで時間はかからなかった。

気付けば、Kとは一番仲がいい人となり、親友と呼べるくらいになった。

Kは私よりも2つ年上で、凄くしっかりしている。
困ったときはいつも助けてくれたし、相談に乗ってくれた。

今考えてみると、親友と言うよりはお姉ちゃんという感じだったかもしれない。
Kも私のことを妹のように可愛がってくれていたと思う。

Kの部屋にいる時間が長くなり、下手をすれば、自分の部屋にいる時間よりも長くなっていた。
Kは私に、「なんなら一緒に住んじゃう?」なんて言ってくれて、私も悪くないかなと思った。

そんなあるとき、私の部屋にちょっとした違和感があることに気付く。
物が無くなったり、増えたり、位置が変わっていることがある。
最初は気のせいかと思ったけれど、次第に、気のせいじゃないとはっきり言えるくらい頻繁に起こるようになった。

もちろん、そのことをKに相談した。
するとKはすぐに私の部屋に隠しカメラを設置してくれた。

そして、その映像を見て、私とKは思わず悲鳴を上げた。

なぜなら、見知らぬ男が、私の部屋に入り込み、物色していたのだ。

Kはその男が、ストーカーだと言い、すぐに警察に通報した。
警察の人はその男のことを捜査しつつ、定期的に巡回すると約束してくれる。

それでも怖いことには変わりない。
そんな私に、Kはその男が捕まるまで、自分の部屋で寝泊まりすればいいと言ってくれた。
私はKの言葉に甘え、Kの部屋で生活することにした。

それから3ヶ月が経っても、その男が捕まったという連絡はない。
もしかしたら、警察の気配を感じて、諦めたのかもしれない。
そろそろ、自分の部屋に戻ろうかと思っていたときだった。

ふいに、街中で声を掛けられた。
それは、カメラに写っていた、あの男だった。

男は以前、店で見たときに一目ぼれした言い、付き合って欲しいと言ってきた。

私は怖くなってその場を逃げ出した。
そのことをKに話したら、Kはすぐに警察に通報してくれる。

家の周りの巡回は強化してくれたが、男は私が出かけているときに声を掛けてきた。
そのたびに通報するが、警察がかけつけることには男は逃亡してしまう。
そして、警察は男を捕まえることができないようだった。

外にいるときに声を掛けられるということは、完全にこちらの行動を把握しているということだ。
このままだと、何をされるかわからない。
そう考えると、私はKの部屋から出ることができなくなった。
会社も休むことが多くなり、辞めることにした。

私は精神的に参ってしまい、一度、実家に帰ろうと思っていたときだ。

Kが「もう大丈夫」と言った。
どうしてそう言えるのかはわからなかったが、私は少しずつ、外に出るようになった。

Kの言う通り、男が声をかけてくることはなかった。

自分の部屋に帰る日も増えてきて、また前の生活に戻りつつあり、そろそろ就職活動をしようかと思っていた時だった。

Kが逮捕された。
殺人の罪で。

Kが殺したのは、あの男だ。

Kはあの男に注意しようとして、口論となって殺したと証言した。
裁判でも、絶対に私の名前を出さず、あくまで私とは無関係で起こった事件だと主張していた。
判決は懲役10年。

収監されてからも、Kからは頻繁に手紙が届いたし、私もよく面会にも行った。

Kはしきりに、出所したらまた一緒に暮らそうと言い続ける。
Kのしたことは許されないことだ。
だけど、それは私のために思ってやってくれたことだ。
だから、Kが出所したら、また一緒に暮らすのもいいと思っていた。

けれど、良くも悪くも時間は過ぎていく。
3年が経ち、私たちが一緒に過ごした時間よりも、Kが刑務所に入ってからの時間の方が長くなった。

新しい仕事にもつき、私は私で新しい生活を始めている。
次第にKの面会に行く回数も減っていった。

ただ、その分、Kからの手紙が増えた。
そこには私たちが一緒に過ごしてきたときの思い出が綴られている。
そして、最後には必ず、「また一緒に暮らそう」と書かれていた。

私はだんだんと、Kに対して薄気味悪さを感じるようになった。
面会もほとんど行かなくなる。

でも、それに反比例するようにKからの手紙が増える。

私は怖くなって、引っ越しをした。
Kが住んでいた隣の部屋から、別のマンションへ。

それから1ヵ月がした頃だった。
突然、Kから手紙が来た。

もちろん、私は新しい住所はKに教えていないし、引っ越してからはKの面会にも行っていない。
それなのに、Kからの手紙が次々と届く。

それから数年が経った。

私は何度か引っ越しと転職をした。
それでも、未だにKからの手紙は届いている。

そして、今年。
Kが刑務所に入ってから10年になる。

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