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俺は物流倉庫で仕分けの仕事をしている。
運送業のドライバーがブラックだというのは有名だけど、倉庫で仕分けの仕事も結構なブラックだ。
毎日、運送するための検品、ピッキング、梱包をしなければならない。
次の日に運送のトラックが来るので、それまでに全部終わらせる必要がある。
たとえ、1日の業務時間内に終わらなくても。
じゃあ、終わらなかったらどうするか?
当然、残業で賄うしかない。
しかも当たり前のようにサービス残業で。
タイムカードを切らされ、それから作業を開始する。
さらに最悪なのはパートや派遣には、お金がかかるので残業はさせられない。
だから残業するのは必然的に社員だけになる。
そして、うちの支社には正社員が店長と俺を含めて3人しかいない。
本当にクソなのが、店長は時間になったらさっさと退社しやがる。
となると、終わらなかった作業は俺と、もう一人でやることになる。
そこまでなら、ギリギリ耐えられたかもしれない。
けど、もう一人の社員というのが、店長以上にクソ野郎で、すぐサボるのだ。
社員なのに全く責任感がない。
時間がなくて、俺が必死に作業をやっている横で、平気でソシャゲをポチポチやり始める。
本人はAPだか、BPだかを使い切る短い時間だけだと、言っているが、そういうことじゃない。
こっちは1分1秒に追われている中で、そんなことをしているのが腹立たしいのだ。
しかも、トイレといって、個室の中でサボってることも知ってる。
店長に相談してみたこともあったが「辞められた困るし、会社的にパワハラになるから」と誤魔化されてばかり。
そんな状況で働いていれば、ドンドンと精神的に消耗していくのは当然だ。
あるとき、俺は心の糸がプツリと切れた。
もうどうでもいいや。
そんな気持ちになった。
俺だけが必死に働いて、支障なく毎日の業務をこなしていることに、なんの見返りもなく、逆に当然のように扱われる。
冗談じゃない。ふざけんな。
そう思って、俺はその日、仕事を全部、同僚に押し付けた。
同僚は不服そうにしていたが、知るか。
今までの報いだよ。
俺は心の中で、そう吐き捨てた。
そして次の日。
うちの支社は大騒ぎになった。
終わらせるべき仕事が全然終わってない。
しかも、残って仕事をしていたはずの同僚と連絡が取れないらしい。
バックレだろうと、その場にいるほとんどの人間が思っただろう。
ただ、それにしては不可解な点があった。
うちの倉庫には棚を操作する機械があるのだけれど、それの操作をミスすると挟まれるという事故が起きかねない。
そして、その棚のところに、血痕があった。
じゃあ、機械に挟まれたんだろ、と思うところだが、そうだとしたら死体がないのがおかしい。
俺は昨日、体調不良で定時にあがったし、店長に限っては毎日、定時上がりだ。
となると、倉庫内には同僚一人ということになる。
結局、店長は操作ミスをして挟まれそうになって、怪我をし、そのせいで間に合わないからバックレた、ということにした。
ただ、仮に同僚がバックレたとしても、作業が終わってないことには変わらない。
その日、店長は本部に呼ばれて、かなり怒られたらしい。
そして、その日から、同僚がいなくなったということもあり、店長も残業するようになった。
店長は要領が悪いが、同僚のようにサボらないから、随分とマシだ。
そんなある日のこと、俺は店長に呼び出された。
「変な悪戯をするのはやめてくれ」
突然、店長にそんなことを言われ、俺はわけがわからなかった。
なんでも、いなくなった同僚のタイムカードが押されているらしい。
当然、俺はそんな悪戯はしていない。
パートや派遣にも、そんな悪戯をするような人もいない。
というより、そんな悪戯をする意味がない。
だから俺は店長に、同僚のタイムカードを破棄すればいいんじゃないかと提案した。
だが、店長は首を横に振った。
「何度も破り捨てたよ。でも、次の日には元通りになってる。それまで打刻された分もちゃんと戻ってるんだ」
その話を聞いて、俺はゾッとした。
店長がそんな嘘を付く意味もないから、たぶん、本当のことなんだろう。
店長は破り捨てたと言っていることから、どう考えても誰かの悪戯とも思えない。
店長も、あまりの不可解な出来事に頭を抱えている。
そこで俺は「気にするのをやめましょう」と提案した。
確かに不気味だが、逆に言うと単に打刻されるだけだ。
気にしなければ別に実害がわるわけではない。
それを聞いて、店長も納得し、気にするのをやめたとのことだ。
それから1年くらい経った今でも、行方不明の同僚はタイムカードを押し続けている。
そのことに、俺も店長もすっかり慣れてしまった。
でも、未だに一つだけ気になってることがある。
一体、誰が同僚の死体を片付けたんだろう?

