俺たち3人は親友だった。
幼稚園の頃からの付き合いで、小学校の時もみんな違うクラスだったときでも、休み時間のたびに3人で集まっていた。
学校が終われば、当然、日が暮れるまで3人で遊んだし、休みの日なんか、朝から夜までずっと3人で遊ぶことが当たり前の状態だった。
それは中学生になってからも変わらず、俺たちは3人でいることが優先した。
というよりも、それが当然のことで、他に友達を作ろうとは考えたことさえもなかったくらいだ。
あるとき、オカルト好きなTが「凄いものを見つけた」と言ってきた。
何かと思ったら、『死神との契約方法』という本だった。
その本には、死神と契約すると、寿命と引き換えに願い事が叶うと書いてあった。
取られる寿命は1年単位で、願い事の内容が強大なほど、寿命が多く取られるらしい。
そこでTは3人で試してみないかと言い出した。
正直俺は寿命が取られるなんて、万が一にもを考えると嫌だったが、意外とSも乗り気だったので、その場の空気的に試してみることになった。
本に書いてある通りに儀式を行う。
そして、最後に願い事を紙に書くことになる。
「1億円欲しいとかにしてみるか?」
「馬鹿。それで寿命が50年とか取られたらどうすんだよ」
「じゃあさ、1万円くらいは? それなら1年で済みそうじゃない?」
そんな話の流れで、俺たちは3人とも『1万円が欲しい』と願うことにした。
そして、次の日の朝。
俺の枕元には1万円札と『回収しました』と書かれた紙が置いてあった。
本当に叶った。
そのときの俺はあり得ないことが起こったことに対しての、恐怖感よりも好奇心の方が上回った。
学校に行くと、TもSも俺と同じように、枕元に1万円札と『回収しました』という紙が置いてあったらしい。
この儀式を知っているのは俺たち3人だけだ。
仮に、今回のことを言い出したTの悪戯だったとしても、夜に俺の部屋に気付かれずに侵入するなんて無理だし、そもそもTが2万円を持っているとも思えない。
つまり、どう考えても悪戯とは考えられなかった。
それから俺たちは何かあるごとに、願い事を叶えていった。
小さい願い事ばかりだったが、もう10回以上も儀式をしている。
「さすがにそろそろヤバくないか?」
俺がそう言うと、TもSも笑いながらこう言った。
「あのさ。今、人生100年時代だぞ。100歳で死ぬのが90歳になるくらいどってことないだろ」
「そうだよ。俺は逆に100歳までなんか生きたくないね。70くらいでいい」
中学生からしたら、70歳なんて遥か先のことだ。
俺もその時は、妙にその言葉に納得してしまった。
とはいえ、あまり続けるのもよくないということで、最後に10万円を願って終わりにしようということになる。
そして次の日。
俺の枕元には3万円と『足りません』という紙が置いてあった。
俺はその紙を見て、血の気が引いた。
すぐに学校に行くと、すでにTもSも来ていた。
2人とも顔色が悪い。
それもそのはずで、Tは5万でSは2万という差はあっても『足りません』と書かれた紙が置いてあったのは同じだったからだ。
「足りないってどういうことだ?」
Tがそう言うが、俺もSも何も言えなかった。
それはどう考えても『寿命が足りない』という意味しか考えられないからだ。
それはT自身もわかっているはず。
「いやいや、おかしいって。まだ最低でも50年くらいはあるはずだろ」
Tがヒステリックに叫ぶが、やはり俺たちは何も言うことができなかった。
Sが「お寺とかに行って、お祓いしてもらおう」と言い出し、俺たちはすがる思いでお祓いに行った。
「これでもう大丈夫だよな」
Tが無理やり自分を納得させるようにそう言った。
俺もSも頷いて、大丈夫と言い合った。
次の日。
Tが死んだ。
学校に来るときに信号無視した車に轢かれたらしい。
「やっぱ、ダメじゃん! 寿命尽きたんだよ! どうすんだよ!」
Sが思いつめたようにそう言ったが、俺は何も返すことができなかった。
それから3日後。
Sが死んだ。
部屋での首つり自殺だった。
次は俺だ。
自然とそう思った。
怖くないと言えば嘘になるが、TもSもいない日常はどこか非現実的な感覚がして、悪い夢のように思えた。
そしてそれから20年が経った今、生まれたばかりの娘を見ながら、ふと、あのときのことを思い出してしまった。
俺がこうして生きていることから、取られたものは寿命じゃないということになる。
それじゃ死神は、一体、俺から何を取っていたんだろうか?

