本編
最近、甥っ子が文字を書くことを覚えた
まだ簡単な言葉しか書けないのだが、それが妙に可愛らしい。
紙とペンを渡せば、紙いっぱいに文字を夢中で書く。
それもすごく夢中に。
甥っ子の母親、つまりは俺の妹になるのだが、紙を渡しておけば何時間も放っておけるから楽だと言っていた。
気持ちはわからないでもないが、それはどうだろうと思う。
ただ、油断しすぎると壁とか床とかいろんなところに落書きをするから、完全には目を離せないらしい。
でも、実家に甥っ子が来ると、可愛いから目を離すなんてことはない。
俺の母親なんて、少しくらい壁に落書きされても、笑っているくらいだ。
遠くにいるから、なかなか実家に来ないというのもあるし。
今回のGWは大型連休だったから、2日も泊まっていった。
昨日の夜は、親父と、どっちが甥っ子とお風呂に入るか喧嘩した。
結局、親父と一緒に入ったけど。
今日は俺がお風呂に入れたいと思ってる。
そんなことを考えながら洗面所で顔を洗っていると、浴室のドアに「きたよ」と書いてあった。
きっと、昨日の夜に湿気で曇っているところを、甥っ子が書いたんだろう。
なんとも可愛い字だ。
朝からなんだかほっこりした。
終わり。
■解説
湿気で曇っているところに字を書いたということは、浴室の中の方から書いたことになる。
しかし、語り部は洗面所の方から見ている。
それなら、文字は「裏文字」になっているはずである。
それなのに「きたよ」と読めるということは裏文字になっていないことになる。
もし、洗面所の方から書いたのかもしれないが、一晩経ってもドアが曇っているのは変である。

