本編
今日は第一志望の会社の面接だ。
会社説明会に行ってからずっと、働くならこの会社しかないと決めていた。
絶対に入りたいと思っていて、この会社のことはずっと調べて準備を進めてきた。
会社の理念や、目指す方向性はもちろん、どんな商品があって、どれが売れているかも完璧に把握している。
正直に言って、下手な社員よりも、この会社について詳しい自信がある。
友達に面接の練習を手伝ってもらったり、大学の就活センターで就職試験の対策もしっかりとやった。
とにかく、この会社しかないと考えていた。
そのくらい、この会社に懸けているのだ。
友達からは少し異常だと言われたけど、そんなことは関係ない。
親の手前、他にも会社を受けて内定をもらっているけど、もし、今年落ちたら来年もチャレンジしようかとも考えている。
最近は寝ても冷めても、会社の面接のことばかり考えている。
夢でも何回も面接をしたくらいだ。
本番の今日は、ほとんど寝れなかった。
でも、大丈夫だ。
少しくらい頭が働かなくても、どんな質問がきてもちゃんと答えられるようにシミュレーションをしている。
会社に到着し、受付で面接を受けるために来たと伝えた。
すると、受付の人は怪訝な顔をして、こう言った。
「……今日、面接予定の方の中に、名前がありません」
慌てて、書類を見てみた。
すると、面接の日は1週間前だった。
終わった。
まさか、日付を間違えるなんて。
もうダメだ。
本当に、どうしようもない。
こんなつまらないミスをするなんて。
自分自身に腹が立つし、情けない。
もう生きていても仕方がない。
やけっぱちになり、どうやって命を断とうか考えていたときだった。
その会社から一通の書類が届いた。
それは採用通知だった。
終わり。
■解説
語り部はその会社に執着し過ぎるあまり、夢と現実の区別がつかなくなっている。
つまり、語り部は受けた面接を、夢だと思っていた。
語り部は希望通り、目的の会社に採用されたが、精神的に病んでいる可能性が高い。

